以前にも高齢者(65歳以上)の「家庭内事故」を話題にしましたが、平成29年の最新データによると、家庭内事故死の原因トップが「転倒・転落」になっています。件数も増加の一途。筆者がデータチェックを始めてもう10年以上になりますが、最初の頃いちばん多いのは「溺死・溺水」(浴室)でした。ここ数年は「窒息」(食べ物をのどに詰まらせる)が一番多くなっていましたが、今回の調査では転倒・転落が最多。しかも内情を細かく見ると「同一平面上での転倒」がなんと約82%です。ようは段差のないバリアフリーの床ということ。年間8,792件という数字は「死亡」数ですから、死亡に至らずとも怪我や障害が残った人はかなりの数に上ると考えられます。
高齢者の運転
高齢者が運転する車の事故も増えています。道路の逆走、アクセルとブレーキの踏み間違い、前方・後方不注意など、以前より反射神経や判断力、体力が落ちているがゆえの「まさかの事故」も少なくありません。また、認知症の自覚がなく運転を続ける高齢者も後を絶ちません。一方で、地方では「足」としての車がないと生活ができない現実もあります。自動運転の車の開発も進んでいますが、単に「車をとりあげればよい」ということではないところが難しい問題です。今後、75歳以上の免許保有者はさらに増加すると推測されています。
自覚はなくても・・・
家庭内事故も交通事故も、「自分は大丈夫」と思う人がほとんだと思います。家庭内事故は、要介護の人より自立や介護度の軽度の人のほうが多い傾向です。自身の心身の衰えに対する自覚がないことも要因です。家庭内事故はデータが示すように、「バリアフリーにしたから安全」とは限りません。むしろ、バリアを乗り越えられる力があるのにそれを除いてしまうと、逆に体が衰えることも考えられます。簡単ではないですが「自身の状況」を客観的に見て、できるだけ事故発生の予防をすることも大切ですね。
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山中由美<エイジング・デザイン研究所>
大学卒業後、商社等を経て総合コンサルティング会社のシニアマーケティング部門において介護保険施行前から有料老人ホームのマーケティング支援業務に携わる。以来、高齢者住宅業界、金融機関の年金担当部門などを中心に活動。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。2016年独立。