安易に選ばない「高齢者向けの住宅・施設」
筆者の専門とするところは「高齢者の住まいと暮らし」です。20年程前に比べると、驚くほど高齢者住宅の類は増加し、情報も氾濫するようになりました。子世代が探す親の介護施設、高齢者自らが「自分の老後」を託すために探す施設、いろんな立場の人が「高齢者の住まい」を求めて、検討しています。しかし、トラブルが決して少なくないことも否めません。情報誌や情報サイトでは「安く入れる老人ホーム」といったPRや、ときには「老人ホームランキング」などの企画もされていますが、決してそのような情報を「鵜呑み」にしないでほしいと思います。そもそも、探す前に自身の「目的」と「条件」をしっかり考えてからでないと、適切な住まいを探すことはできません。「こんなはずじゃなかった」とならないためにも、広告や雑誌記事などに安易に依存しないことです。
高齢者住宅の分類と契約は難解
老人ホーム、高齢者住宅、介護施設、この違いを正確に説明できる方はいるでしょうか?筆者もできません。これらのコトバには正確な定義がありません。「だいたい」のイメージワードといってもいいでしょう。しかし、高齢者の住まいは制度的にきちんと分類されています。一方で、この分類が非常に理解しづらい。あまりにも種類が増えすぎ、さらに改正に次ぐ改正で、分類されたもののボーダーがわかりづらくなってきています。それでも、トラブルになったときには「根拠法」などが重要です。施設によって、行政管轄、根拠法が異なるので、できるだけきちんと理解してから選択する方が良いでしょう。さらに、契約の際には「重要事項説明書」や「契約書」など複数の難しい書類に「納得しました」というサイン・押印をせねばなりません。「口頭で説明受けたし、まあいいか」では済まされません。後々何かが問題化したときに、サインした書類が証拠になります。
わかりづらい高齢者住宅や制度を、筆者もセミナー等で解説しています。これから高齢者住宅への住み替えを検討している方は、筆者が担当しないものでも(苦笑)勉強会に参加した方が良いでしょう。文面だけで理解するのは相当困難といえます。耳から聞くことで理解も深まります。あわせて、先日わかりやすい資料を見つけました。国民生活センターのホームページがらダウンロードできます。日本大学法学部の矢田先生が書かれた「高齢者向け住まいの契約書の見方」を中心とした解説です。とてもわかりやすくおススメです。「命とお金」を預ける先です。安易に選べるものではない、ということを意識しておいてほしいと願います。
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山中由美<エイジング・デザイン研究所>
大学卒業後、商社等を経て総合コンサルティング会社のシニアマーケティング部門において介護保険施行前から有料老人ホームのマーケティング支援業務に携わる。以来、高齢者住宅業界、金融機関の年金担当部門などを中心に活動。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。2016年独立。