6月18日の地震のこと(1)ー当日午前ー

でもまだふわふわとした気持ちで現実感がなく、茫然としながら,落ちたものを拾い,割れたマグカップを袋に入れました。体が自動的に動いている感じでした。

気が付いたら9時を過ぎていて,もう1度スマホを見ると保育所からメールが来ていました(「もしもの時用」のシステムで一斉メールが送信される仕組みがある)。件名は「臨時休所になりました」,本文は「保護者の皆様 地震が震度5を超えましたので、臨時休所になりました。順次,お迎えのほうよろしくお願いいたします」受信時間は8時55分。まずい!息子のことを心配していたのに頭からふっ飛んでいた。急いで迎えに行きたい。大丈夫でいて!息子!と祈るような気持ちでした。

よくよくLINEを見たら、ママ友グループのLINEで「幼稚園休み! 小学校も迎えに行く!娘心配。通学中でしゃがんで固まってた,おさまってから学校に歩きだしたと近所の方から連絡きたので」「Aちゃん外出前にガスと電気の確認よ!」「ガス電気OK。行ってくる!」。…まずい,もう9時を回っている。でも息子が帰ってくるなら,マグカップの破片だけはなんとかしなければと思い,割れていた周辺に掃除機をかけて細かいかけらをある程度吸い取ってから急いで迎えに出発しました。

途中,1か所踏切を通るのですが,遮断機が下りていました。知らないお兄さんが「電車動いてませんから」と,棒をあげてくれたので自転車を通すことができました。

保育所に走りこむと,事務室で所長先生,副所長先生,何人かの先生が深刻な顔でいらして,お迎えがまだの子どもはホールでひとまとまりになっていました。「K!」と呼ぶと「あ,ママ」と。いつもお迎えのときは「Kちゃん,ぎゅうーーー」と抱き締めるのですが,この日は特別に「Kちゃん,ぎゅううーーーー」と長めに抱き締めました。良かった。良かった。笑ってるよ息子…。

先生に迎えが遅くなったことを詫び,子どもの面倒を見てくれたお礼を言って,荷物をもって,息子と自転車にのりました。踏切はやはり遮断機がおりたままでした。Aスーパーの前を通ると「スプリンクラーが作動して水浸しで入られへんのやって」と知らない人が教えてくれました。Bスーパーはあいていましたがすごい人だかりだったので,まぁ食糧と水のストックはあるしあせらなくてもいいや,と,まっすぐ家に帰りました。このときはまだことの重大さに気付いていなかった…実感していなかったかもしれません。突然のことに茫然とした気持ちと,息子に会えた安堵感でいっぱいでした。(続)

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橋本京子
大阪府茨木市生まれ。京都で大学生・大学院生時代を過ごす。現在,心理学関係の研究,大学の非常勤講師をしながら,5歳になる息子の子育て中。「人間は“病的な心理状態を普通の状態に戻す”だけではなくて“もともと個人が持っている長所や強みを生かして,より幸せな人生を送る”ことができる。それは“しんどい”“つらい”時にも発揮される人間の力である」ということを実践,研究したいと考えている。


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