高齢期の暮らしと住まい(22)

高齢期に戸建てから集合住宅へ

住宅双六のゴールは「庭付き一戸建て」という長年の定説があります。寿命が今ほど長くなく、3世代同居も多かった時代はそこが終の棲家になった人も多かったはず。しかし、時代は核家族長寿化になり、高齢者のみが住む一戸建てには様々なリスク(維持・災害・防犯)が発生。愛着ある我が家を手放してマンションなど便利な集合住宅へ住み替える人も多くなりました。実際「庭の手入れができない」「2階に上がれない」「訪問販売が不安」などの声が多くなっていると感じます。ちなみに「住宅双六」は建築学者の上田篤先生が1973年に作成された、ホンモノの双六です(^_^)。そして2007年に「現代住宅双六」を作成され、そのゴールは一戸建ての後に6種類のゴールが設定されました。老人ホームや親子マンション、外国定住など、まさしく「現代」を表しています。

 

住宅戸数の伸び率は、戸建てより圧倒的に集合住宅が多い。築40年以上の割合も増加の一途

高齢化する住宅

さて、一戸建てからマンション(集合住宅)に住み替えて「便利になった」という人は確かに多い。駅上、駅近だとさらに便利ですし、防犯上も一戸建てよりは安心。庭木の手入れは不要で、毎月修繕積立金と管理費は必要なものの、その分手間(屋外の掃除や補修)を気にする必要がありません。ところが、最近は新たな問題が発覚してきています。街の中心地や築年数の短いマンションではまだ実感しないところもありますが、居住者全体が高齢化してしまい、管理組合の維持が難しくなってきているということです。30年前に新築で移り住んだ人がそのまま住み続けていれば30歳加齢しているということ。建物も居住者も「高齢期」になっています。管理組合の役員も高齢者ばかりになり、なり手がいない、物事が決められないということが表面化してきました。高齢者専用の分譲シニアマンションではさらに顕著な問題で、認知症や要介護の人も少なくない中、「消去法で若手高齢者が担うしかない、思わぬ負担」と言われています。分譲マンションの場合、法律上管理組合は必須です。

 

「住宅に対する国民の意識」5か国比較では、日本と韓国の満足度が低い。古い家屋を丁寧にメンテナンスして超長期間住み続ける欧米のほうが満足度が圧倒的に高い

「もったいない」日本での住宅消費

モノを大切にする日本文化の中で、どうも住宅だけは大切にされていないように感じます。京都では町家再生など最近は古くからの住宅を維持する動きも出ていますが、日本の空家率は世界でも類を見ない高さで大きな問題になっています。それなのに、どんどん新しいマンションや住宅地が造成されていく。欧州に目を向けると築400年の集合住宅がいまだに賃貸住宅として現役で提供されています。建物を大切に使い、高齢者から若者世代まで暮らしやすい設備や仕組みをつくることで、多世代が長く住み続けられるように変えていくことが大切なのではないか。経済対策といえば建築・建設という流れに向かいがちな日本ですが、高齢期だけでなく全世代で表面的な住宅施策ではなく本質的な対策が必要なのではないのでしょうか。

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山中由美<エイジング・デザイン研究所>
大学卒業後、商社等を経て総合コンサルティング会社のシニアマーケティング部門において介護保険施行前から有料老人ホームのマーケティング支援業務に携わる。以来、高齢者住宅業界、金融機関の年金担当部門などを中心に活動。2016年独立。

 


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