宮津市の特養ホームで高齢者虐待
2月16日、京都府は宮津市の特別養護老人ホームで入所者17人に虐待の認定、もしくは可能性があるとして、改善勧告を出しました。あわせて、傷害と暴行の容疑で京都府警に告発すると発表しています。80人定員の施設で一度に17人もの入所者への虐待が疑われるとは、かなりの規模に上がります。こうなると一部の職員の事件というより組織的な問題を疑わざるを得ません。発覚は、病院の医師が入所者のアザや傷など不審な状態を発見したから。これがなければベールに囲われたままだったかもしれません。京都府の施設なのに事業主体は高知県の社会福祉法人。理事長は「内部調査したが虐待の実態はない」と当初述べていたとか。遠く離れた法人責任者がどこまで把握、指導できたのでしょうか。
高齢者虐待とは
上記のケースでは、17人に不自然な骨折、アザ、皮下出血などが見られ、身体的虐待にあたります。虐待には他にも「ネグレクト」(介護や世話の放棄、何もしない)、心理的虐待(嘲笑したり怒鳴ったり侮辱するなど)、性的虐待(裸にして放置するなど)、経済的虐待(本人の金銭を使わせなかったり横領したりする)があります。厚生労働省では毎年虐待の調査をしていますが、ここに現れる数字は氷山の一角ともとれます。そして、実際には、施設内虐待よりも家庭内虐待のほうがずっと多いのです。家庭内での虐待者は、毎回の調査で「息子」が多数を占めます。続いて夫、と家族の中でも男性が60%以上を占めます。続いて娘、妻など、非常に近い親族が虐待を行う結果となっています。
難しい解決策
高齢者虐待防止法で、虐待の様子を発見した際には市町村に通報することを求めています。施設での虐待も内部通報や医療関係者からの通報が増えています。しかし、家庭内での虐待は近隣の人が通報することは相当の覚悟も必要で難しい問題です。幼児虐待と同様ですが、親族による密室内の出来事では立ち入ることも簡単ではありません。それでも、不信を感じたら周辺が声をかけ助けていく(通報含め)ことが大切ですし、介護現場で働く人も、家族介護をする人も、介護の負担が重くなりすぎたときには自ら外部に助けを求めてほしいと思います。その受け皿を整備することも大切です。制度を作るだけでなく、そこには「人」の投入は不可欠。当事者意識を誰もが持っていたいですね。
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山中由美<エイジング・デザイン研究所>
大学卒業後、商社等を経て総合コンサルティング会社のシニアマーケティング部門において介護保険施行前から有料老人ホームのマーケティング支援業務に携わる。以来、高齢者住宅業界、金融機関の年金担当部門などを中心に活動。2016年独立。