ミサイルについては今年だけでも9月15日までに14回発射しています。その飛行距離も着実に伸び、9月15日のミサイルは推定3700キロメートル飛びました。これは方向さえ変えれば、確実にアメリカ領グアムを狙える距離です(北朝鮮からグアムまでは約3400キロ)。北朝鮮はアメリカ本土をも射程に収めたICBM(大陸間弾道ミサイル)の開発も進めており、その性能もだいぶ向上しているようです。
なお、念のために言い添えておきますと、北朝鮮が発射するミサイルには核弾頭はもちろん、いかなる爆弾も搭載されていません。飛行距離をテストもしくはデモンストレーションするのが目的ですから、ミサイルの先端部分には核弾頭と同じ目方の重りは付けていますが、着弾と同時に爆発を起こすことはありません。実際、爆発など起こせば、それこそ先制攻撃になりますから、アメリカに北朝鮮を攻撃する口実を与えてしまいます。そのような事態を招かぬよう、北朝鮮は言葉では非常に挑発的なことを言いますが、実際行動においては極めて慎重にミサイルを飛ばしています。現に日本もアメリカも、今のところ北朝鮮のミサイルによって何一つ実害は受けていません。
どうすれば北朝鮮の核やミサイルの開発を止めることができますか?
国際社会による経済制裁が功を奏し、北朝鮮に核・ミサイル開発を行うだけの経済的余力がなくなれば可能でしょう。しかし、現在までの推移をみるかぎり、その可能性は必ずしも高いとはいえません。だからといって、軍事力によってそれをやめさせることもできそうにありません。北朝鮮がミサイルに爆弾を装着する準備でも始めれば、軍事的手段によって阻止するしかありませんが、今のところはあくまでも自国内で核実験を行い、公海上に弾頭の無いミサイルを飛ばしているだけですので(しかも誰一人被害者は出ていません)、それだけで攻め入る理由にはなりません。
結局は、関係諸国が交渉のテーブルにつくよりほかに道はありません。交渉によって北朝鮮が核兵器をあっさり放棄するとは思えませんが、辛抱強く話し合いの場を作っていくことが大切です。話し合いが行われている間は、戦争は始まりませんので。
われわれは北朝鮮を「核保有国」として承認することがあってはならないと思います。ただし「北朝鮮だから承認できない」というロジックでは筋が通らないでしょう。人類は核廃絶の道を歩まねばなりません。その道のプロセスとして、これ以上核を持つ国を増やしてはなりません。北朝鮮にもこの道を歩ませるような形で交渉を行うことが肝心です。そのためには現在の核保有国もまた何かしらの歩み寄りが求められます。すなわち今年7月7日、122ヵ国・地域によって採択された核兵器禁止条約を基本としないかぎり、真の解決はあり得ないように感じます。
河原地英武 昭和34年生まれ。東京外国語大学ロシア語学科卒。同大学院修士課程修了。京都産業大学外国語学部教授。専門分野はロシア政治、安全保障問題、国際関係論。俳人協会会員でもあり、東海学園大学では俳句創作を担当。