かわらじ先生の国際講座~北朝鮮問題を考える

京都産業大学教授 河原地英武

日頃、身近に感じにくい国際情勢について
カナリア倶楽部共同代表で
京都産業大学教授の河原地英武が
わかりやすく解説します。

第1回のテーマは北朝鮮問題。
緊張が高まる中で大事なことは何か
共に考えましょう!

北朝鮮はなぜ核武装するのでしょうか?
現在の金正恩体制を存続させるためです。金正恩は外部の力によって自らの政権が転覆させられることを極度に恐れ、警戒しています。実際、朝鮮半島近海では米韓合同軍事訓練が行われ、その中には金正恩ら首脳部を標的とする「斬首作戦」も含まれます。定期的に行われている日米合同軍事訓練も、主要な目的の一つは北朝鮮への対処です。このようなアメリカを要とする軍事包囲網に対し、北朝鮮は通常戦力ではとてもかないません。仮に武力紛争が起これば、金正恩政権はたちまち崩壊してしまうでしょう。
しかし、北朝鮮がアメリカに到達する核兵器を持てば、事情は変わってきます。アメリカとしても核戦争を招き、自国民を犠牲にするような事態は望まないはずです。すなわち北朝鮮は、核兵器を持つことが唯一、アメリカに軍事攻撃を思いとどまらせる手段だと考えているのです。このように、核兵器には相手の軍事行動を抑制させる力があります。これを「核の抑止力」と呼びます。北朝鮮は核兵器を持つことにより、いわばアメリカ国民を人質にとる形で、アメリカに軍事攻撃させまいとしているわけです。

北朝鮮は現実に、アメリカを攻撃できるだけの核兵器を持っているのですか?
北朝鮮が繰り返している核・ミサイル実験から察するに、たしかに持っていると言わざるを得ません。核兵器は大別して2つの部分から成ります。核爆弾(特にミサイルの頭に装着するものを核弾頭と呼びます)と、それを敵地にまで運んでゆく運搬手段、つまりミサイルです。核弾頭をミサイルに付けて、初めて核兵器となります。この核兵器が本当に兵器として機能するかどうかは、実験によって確かめるしかありません。実験は、核弾頭とミサイルのそれぞれに対してなされます。
北朝鮮は過去に6回、核実験を実施しています。日本防衛省の推定によれば、今年9月3日に行われた6回目の実験は、広島に投下された原爆の10倍超の規模のものだったといいます。
ちなみにどの核保有国も、過去には数多くの核実験を行ってきました。たとえば冷戦時代にアメリカは1000回以上、ソ連は700回以上、実験を繰り返してきました。1996年には国連で包括的核実験禁止条約が採択され、核実験そのものが違法となりましたが、核保有国は過去に蓄積した膨大な実験データと、未臨界核実験と呼ばれる核爆発を伴わない実験方法の導入によって、核兵器の性能維持と開発に努めています。北朝鮮はまだデータ不足ですし、未臨界核実験の技術もないでしょうから、今後も核実験を続けるものと推測されます。


Warning: Use of undefined constant php - assumed 'php' (this will throw an Error in a future version of PHP) in /home/canaria-club/www/wp-content/themes/mh-magazine-lite/content-single.php on line 21

Warning: Use of undefined constant php - assumed 'php' (this will throw an Error in a future version of PHP) in /home/canaria-club/www/wp-content/themes/mh-magazine-lite/content-single.php on line 30