名田庄診療所所長の中村伸一先生の新著「入門! 自宅で大往生~あなたもなれる『家逝き』達人・看取り名人」が今月発売されました。自宅で最期を迎えたいと望む人が多いのですが、2015年の厚生労働省によるデータでは8割近い人が病院で亡くなっています。そんな中、在宅死亡率42%を実現した名田庄地区。住民の人生に四半世紀伴走してきた中村先生だからこそ見えてきた大往生と看取りの極意が具体的に綴られています。
多世代同居が多く、死が身近だった名田庄にも近代化の波が押し寄せているとか。核家族化で老老介護が増加、戦争を知らない世代の増加で死に対する免疫が落ちたのか、「死」に慣れていないオロオロじいさま、ばあさま、看取る人が急増しているとか。名田庄でさえそうなのですから都市部は尚更。私自身も不安いっぱいの“オロオロさん”でした。死期が迫ると、人はどうなるのか、その時どう対処すれば良いのか、知識も覚悟もないままだったので、父の生前にこの本を読んでいたらなぁと思います。本人は自宅で逝きたいと思っているのに家族が動転して救急車を呼んでしまうケースが多いと言います。救急医療現場は救命が義務付けられているので、本人の望まない延命治療が行われることも。ちなみに「延命治療」と書きましたが、延命を誤解している人が多い、延命か否かの簡単な二元論ではないとと中村先生は書いています。確かによく知らないまま「延命治療は希望しない」という人がいますね。
食べられなくなった時、息が出来なくなりそうな時、心臓が止まりそうな時、迫られる選択肢が説明されていてわかりやすい。例えば食べられなくなった時は①何もしない②点滴③高カロリー輸液④経管栄養、それをするとどうなるか、しないとどうなるかを知っていると覚悟が違います。亡くなる間際の症状も書かれています。昔は日常的に見て知ってたんでしょうけど、本で読まないと分からない時代になったのですね。そして名田庄で見事な大往生をした人たちのことも紹介されていて、こんな風に逝けたら良いなと思います。羨ましがるだけではなく、そのために出来ることをしておきたいですね。自分が看取ること、逝くことを想定して是非読んでおきたい一冊です。(モモ母)