在宅介護は入浴が問題
「最期まで自宅で暮らしたい」という人は多いものの、老化にともない体が思うように動かなくなったり、介護が必要になったときに大変なのが「入浴」です。バリアフリーに改造しても、ひとりで入浴することが難しくなる場合もあります。介護保険が利用できればヘルパーさんに介助してもらう方法もありますが、入浴目的でデイサービスを利用する人もとても多いです。骨粗しょう症などの場合、無理をすると骨折してしまうこともあります。高齢者の家庭内事故では「入浴中の溺死・溺水」も多く、入浴すること自体は自分でできても、万が一急な事故の際の早期発見も課題ですね。
施設での機械浴槽
介護が必要な人のお風呂はどうなっているでしょうか。かつての介護施設では、銭湯のようなお風呂に、介護職員が数名で要介護の人を介助し、脱衣場から浴槽、また脱衣場へと移動、「ベルトコンベヤー」と揶揄されたこともありました。今でも皆無とはいえないでしょうが、入浴介助も大きく変わってきています。そのひとつが「機械浴槽」の目覚ましい発展です。以前は、寝たきりの人用のストレッチャーに寝たまま沈んで入る「特浴」といわれるものが主流でしたが、昨今では専用車椅子で座ったまま入れる浴槽、浴槽にリフトがついていて移動できるものなど、その人の状態に合わせて細かく調整できるお風呂が増えました。
進化する介護浴槽
施設でも、機械浴が必要のない人(ヘルパーの介助があればよい人)には、混合風呂ではなく、個浴(家庭にある一般の浴室と同じような浴槽に手すりなどが十分ついたもの)で対応するところがほとんどです。ひとりずつお湯も入れ替え衛生的ですし、何よりも気遣いなくゆっくり入浴ができます。一方で、介助者が「ちょっと目を離したすきに」事故に至ることもありえます。介護が必要な入浴は、設備と介助者の両視点でのサポート体制が重要なのです。
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山中由美<エイジング・デザイン研究所>
大学卒業後、商社等を経て総合コンサルティング会社のシニアマーケティング部門において介護保険施行前から有料老人ホームのマーケティング支援業務に携わる。以来、高齢者住宅業界、金融機関の年金担当部門などを中心に活動。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。2016年独立。