かわらじ先生の国際講座~翁長知事の辺野古承認撤回をめぐって

沖縄の翁長雄志知事が7月27日、前知事時代の辺野古沿岸埋立の承認を撤回すると表明しましたね。

はい。日本政府は8月17日から辺野古の基地建設予定の海域に土砂を投入する予定ですので、とりあえずそれを阻止する目的があります。11月には沖縄県知事選が控えていますので、おそらく再選を目指す翁長知事としては、改めてここで自分の公約を確認したという意味合いもあるでしょうね。

その目論見通りに進むのでしょうか?

いえ。そうなれば政府は「撤回」の効力を失わせる「執行停止」を裁判所に申し立て、それが通れば、土砂投入は行われます。結局この問題をめぐっては、国と沖縄県の訴訟問題に発展する泥仕合になることも考えられます。

一体いつまでこの「辺野古問題」は続くのでしょう?

きっと多くの国民もそう思っているでしょう。そして沖縄の人々の間にも、そのような気持ちが広がっているようです。すなわち、いつまで沖縄は国と喧嘩を続けるつもりなのか、沖縄県民同士がこの件で対立するのはもうやめたい、といった気持ちです。また、辺野古への移転が長引けば、普天間飛行場はいつまで経ってもアメリカから戻ってこないとの危機感もあります。さらに、辺野古の埋立は何年にもわたる巨大な公共事業となりますから、ゼネコンはもとより、様々な産業部門に大きな利益をもたらす経済効果も期待されています。

では、辺野古の埋立を進める方がよいとお考えですか?

いえ。もし辺野古埋立が実行されてしまえば、日本のモラルが決定的に失われてしまうような危機感を私は抱いています。つまりこれを受け入れることは、第一に、沖縄県民(というより自国民)のことよりもアメリカの利益を日本政府は重視していることを証明してしまいます。対米追従は恒久化されるでしょうね。第二に、日本国民は結局、沖縄の犠牲の上に自らの安全を確保するやり方を今度も続けることを意味します。他府県の住民にとって、沖縄の問題は所詮他人事なのだということになりますね。そして第三に、埋立による環境破壊を容認することは、利権や経済的利潤の追求を優先するという古い「土建国家」の体質からついに脱却できないことを白日の下にさらすでしょう。

つまり辺野古の問題は、日本全体の問題だということですか?

その通りです。実はこの問題は、他人事ではありません。京都府の舞鶴市や京丹後市にも米軍関連施設が設けられています。またアメリカから購入するイージスアショアについては、その配備先候補とされた秋田県や山口県の住民から不安の声が上がっています。つまり、沖縄で起きていることが他府県にも降りかかっているのです。沖縄は日本の縮図だと言っていいでしょう。そして沖縄県民は、日本人にとってまさに「カナリア」の役目を果たし、われわれに警告を与えているように思えます。

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河原地英武<京都産業大学外国語学部教授>
東京外国語大学ロシア語学科卒。同大学院修士課程修了。専門分野はロシア政治、安全保障問題、国際関係論。俳人協会会員でもあり、東海学園大学では俳句創作を担当。俳句誌「伊吹嶺」主宰。


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