約40年ぶりの民法改正<家の相続>
7月に相続法制の見直しが成立しました。相続トラブルは決して他人事ではなく、多くの人が「まさか自分が」という事態に陥っています。お金の有無に関係ありません。特に日本では、お金はなくとも「自宅(土地)」を相続することは多く、残された者がどのように分けるかでもめるケースは少なくありません。そんなトラブルを避けるためには、事前に「遺言書」を作っておくことが大切なのですが、なかなか取り組める人はまだ少ないです。筆者の周辺にも「まさかの事態」で兄弟姉妹の骨肉の争いになったケースが1,2件ではありません。シニア世代はぜひ対策を講じて頂きたいですし、子世代も何らかのきっかけを作って親と話をしておいてほしいものです。
配偶者に住む権利
今回の注目すべき内容は、配偶者に「居住権」という権利を新設したことです。従来は、仮に相続人が配偶者と子達であり、自宅のみが相続財産だとすると、遺産を分配するには自宅を売却する必要が発生し、残された配偶者が住み続けられないといったこともありました。今回の改正により手続きをすることで、配偶者や居住権(そのまま終身で住み続けられる)を取得し、子は所有権として相続することができるようになりました。ただし、諸条件や登記の必要性などもあり、居住権の設定をする場合は専門家に相談することが大切です。
備えあれば憂いなし
たとえば、父を亡くし同居していた母が住み続ける家を取り上げる子は少ないと思いますが、母も高齢の場合は、また近々相続が発生する可能性があります。今回の改正は、長年夫婦の暮らしで一人が残ってもそのまま生活がし続けられるようにという配慮からですが、それでまったく問題がなくなったわけではありません。子である兄弟姉妹がいる場合、またその家屋自体が不要となる場合もあわせて(空家問題)、親の生存中は話をしづらい内容ながら、少しずつ準備をしておいたほうが、後からの苦労は少なくなる可能性が高いです。
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山中由美<エイジング・デザイン研究所>
大学卒業後、商社等を経て総合コンサルティング会社のシニアマーケティング部門において介護保険施行前から有料老人ホームのマーケティング支援業務に携わる。以来、高齢者住宅業界、金融機関の年金担当部門などを中心に活動。2016年独立。