性教育への不当な圧力

先日参加した研究会で、高校生の時に学校内で受けた性暴力によって酷く傷つき、現在も立ち直れないでいる女子大学生のレポートを複数読みました。彼女たちの傷の深さは言葉にできないほどですが、同時に、学校や家庭、身近な地域社会に性暴力が存在していることを改めて思い知らされました。

さて、アメリカのある名門高校では、卒業する男子生徒が後輩の女子生徒と何人セックスができるかを競う「伝統行事」があるそうで、その犠牲でレイプされた女性が勇気ある告発を行ったそうです。彼女は今、同じような被害者をなくすべく、コンセント・エデュケーション(明確なYesがなければ、性行為に及んではいけないという教育)に取り組んでいます。

このような悲劇が日本にも存在していることは上述の通りです。性に関する歪んだ情報が氾濫する社会で生きる子ども達には、正しい知識を教える必要があります。けれど、議員が教育委員会を通じて学校に圧力をかけて、性教育の実施を妨害するということが、最近もまたありました。

この記事に出てくる都議は、2009年に七生養護学校事件と呼ばれる性教育への妨害を行い、後に裁判で敗訴しています。このときの経緯は、TBSラジオで配信されています(55分ほどあります)。

七生養護学校の性教育は、自分の身を守るために必要なことを具体的に丁寧に教えていた授業実践であったことがわかります。性行為・妊娠・中絶・避妊などについて正しい知識を得ることで、若者たちは慎重に行動するようになるというのは、世界の常識なのですが、「知識を得ることで規範が乱れる」と思い込んで攻撃してくる政治家が、日本には今もいるのです。このような現状について、貧困の問題に取り組んでいる藤田孝典さんは「めまいがする」とコメントしています。

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西垣順子<大阪市立大学 大学教育研究センター>
滋賀県蒲生郡日野町生まれ、京都で学生時代を過ごす。今は大阪で暮らしているが自宅は日野にある。いずれはそこで「(寺じゃないけど)てらこや」をやろうと模索中。老若男女、多様な背景をもつ人たちが、互いに互いのことを知っていきながら笑ったり泣いたり、時には怒ったりして、いろんなことを一緒に学びたいと思っている。著書に「本当は怖い自民党改憲草案(法律文化社)」「大学評価と青年の発達保障(晃洋書房)」(いずれも共著)など。


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