高齢期の暮らしと住まい(24)

 

平成29年版高齢社会白書よりデータ抽出、筆者作成

人口減と死亡者数増

日本では、少子高齢化と人口減がセットになって語られるこの頃。「高齢化」「人口減」と組み合わせれば、死亡する人が増加するということです。すでにだいぶ前から「死亡者数増」にあわせて「火葬場不足」が問題視されていたのですが、先日新聞でその深刻さが報道されていました。かつては年間100万人程度の死亡数だったものが、増加の一途をたどり20年後ぐらいにはピークを迎え、その後も高い数を維持すると予測されています。出生数と異なり死亡数はほぼ正しい数値で予測されますので、急激に減るということはまずありません。「多死社会」は、さまざまな問題がありますが、深刻な問題のひとつに「火葬場」があります。

 

火葬場が足りない

特に都市部で顕著な問題です。火葬場をもつ大都市圏の自治体では「火葬待ち」が起きており、新聞記事によると、たとえば横浜市では市営斎場で火葬を待つ平均日数が14年度の3.71日から16年度の4.01日となっており、今後も待機の問題が続くと予測されています。京都市の場合、市の資料を見ていますと、仮想のピークは2031~2035年頃、火葬能力を超える日数が4日と予測されています。どの自治体も火葬場や炉を増やす計画を上げますが、かなりの費用を要することと、用地の確保が難しいという問題も出ています。かつては、洋上で火葬する「火葬船」のアイデアも出されていましたが、再び議論に上がるかもしれませんね。

 

総論賛成、各論反対

日本ではほぼ100%火葬となっています。人間必ず一度はお世話になる火葬場ですので、待機を考えると誰もが必要性を認めるのですが、問題は「我が家の近くに作ってほしくない」と考える人が多いことです。英語の言い回しでも、Nimby(Not in my backyard=私の裏庭はやめて)という言い回しがありますが、火葬場だけでなく、かつては高齢者施設や障害者施設でも建設候補地の住民の反対が多くありました(今でも一部はそうでしょう)。日常的には、病気や介護など、生きてる間の心配ごとが多いのですが、「おちおち死ぬこともできない」ほどに、死後の心配も増えているとは、世知辛い時代となりました(◞‸◟)。

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山中由美<エイジング・デザイン研究所>
大学卒業後、商社等を経て総合コンサルティング会社のシニアマーケティング部門において介護保険施行前から有料老人ホームのマーケティング支援業務に携わる。以来、高齢者住宅業界、金融機関の年金担当部門などを中心に活動。2016年独立。

 


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