最期まで自宅で過ごすとしたら
先週、大阪のある自治体で高齢期の暮らしをテーマにセミナーを行いました。高齢者住宅に住み替えという方法もありますが、できれば自宅で過ごしたいという人も少なくありません。でも、その場合も(ある意味その場合はさらに)自分の心身が弱った時に支援してもらえるサービスの確保は必須です。家族同居・近居で常に助けてくれるという場合は良いのですが、そのような高齢者はかなり少ないのが現状でしょう。支援を頼める先は、家族、近隣の人、介護・福祉サービスの大きく3つになると思います。セミナーでお話した地域の施設数と在宅介護サービス数・内容などを調べてみましたが、ちょっと不安な点もありました。自分の場合は、誰にどれくらい頼めるか、考えておきたいものです。
周辺にどんなサービスがあるか
街を歩いていると、デイサービスの送迎車によく出会うのではないでしょうか。「近くにデイサービスがあるのかな」と漠然と思う方もいるかもしれませんね。しかし、自宅に住みながら介護や生活支援が必要になった場合、デイサービスだけでは足りません。介護の状況によりますが、介護保険サービスで最も利用されているものが通所介護(デイサービス)、同程度に訪問介護(ヘルパーが自宅に訪れる)です。他にも、訪問看護、訪問リハビリ、ショートステイなどの利用が多いと思いますが、ここでひとつ確認しておきたいのは、夜間の介護体制です。家族同居・近居の場合は良いのですが、一人暮らしや老老介護の場合、夜間の介護サービスも状況に応じては必要となります。夜間対応してくれる介護サービスは、夜間対応型訪問介護、定期巡回・随時訪問介護、小規模多機能型居宅介護などがありますが、いかんせん、これらのサービス事業者は非常に少なく、先週セミナーを開催した町では1つもなかったのでした。
お互いさまの助け合いも重要
今後、高齢者や要介護人口がまだまだ増加していきますが、すでに厳しい介護保険改正が繰り返されるように、誰にでも十分にサービスが提供されるとは言い難い社会になってきています。介護人口増加に比例してサービスは増えません。そんな中で高齢期、どのように暮らしていくか、そのひとつが高齢者住宅などへの住み替えですが、自宅で最期までと考える場合は、隣近所や友人知人との助け合いを深めることも大切です。ある意味、そうしていかないと乗り切れない時代になりつつあるとも言えます。
備えあれば憂いなし。元気なうちから、老後の暮らしをどうするか、誰もが考えておく必要があります。一度周辺の介護・福祉サービスの確認をしてみてください。
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山中由美<エイジング・デザイン研究所>
大学卒業後、商社等を経て総合コンサルティング会社のシニアマーケティング部門において介護保険施行前から有料老人ホームのマーケティング支援業務に携わる。以来、高齢者住宅業界、金融機関の年金担当部門などを中心に活動。2016年独立。