「カナリア俳壇」133

町のなかで卒業式を終えたばかりと思われる若者たちの姿を見かけると、いよいよ春だなと実感します。桜も咲き始めました。われわれも気持ちをリフレッシュし、瑞々しい句を作りたいものですね。

△~〇春の空家族の口に五平餅     作好
【評】「口」がどうでしょう。皆が口にくわえている感じがします。「春の空家族手に手に五平餅」くらいでどうでしょう。

◎浚渫や漣光る春の川     作好
【評】浚渫船が川底の土砂を掬っているのですね。春ならではのきらめきが感じられます。

△~〇畑打ちて目覚め促す老二人     美春
【評】だれの目覚めを促しているのでしょう。たとえば「畑打ちて虫目覚めさす老二人」だと句意がとりやすくなります。

△~〇朝ぼらけ精を出すなり遠蛙     美春
【評】だれが、どこで、何をして精を出しているのでしょう。このままですと「遠蛙」が精を出しているみたいです。「庭畑で精出す朝や遠蛙」などもう少し推敲してみてください。

〇春の月重だるさうに濡れてゐる     白き花
【評】「重だるい」ということばがやや俗っぽい感じです。「濡れてゐる」もやや言い過ぎでしょうか。「重さうに潤みてゐたり春の月」としてみました。

△~〇花の雲三井の晩鐘かくれ鬼     白き花
【評】典型的な三段切れですね。「かくれ鬼」は子供の遊びでしょうか。「花の雲」と「三井」と「晩鐘」と「かくれ鬼」では詰め込み過ぎですので、何かを削らなくてはなりませんが、とりあえず「三井寺の鐘朧なり隠れ鬼」としてみました。

◎巫女舞の緋色の扇春きざす     万亀子
【評】色彩感も豊かで雅な句です。季語も効いていますね。

〇猩々の着ぐるみ並べ春祭     万亀子
【評】郷土色豊かな句です。「着ぐるみ」というと中に人間が入っているのだと思いますが、それだと「並べ」より「並び」のほうがよさそうな気がします。

〇産土や耳朶に残りし呼子鳥     瞳
【評】「呼子鳥(よぶこどり)」とは万葉集にも用例が見られる古式ゆかしい季語ですね。「耳朶」は耳たぶのことで、成語としては「耳朶を打つ」と使われるのが一般的なようです。「産土や耳に残れる呼子鳥」くらいでどうでしょう。

〇~◎片寄せて幼馴染やチューリップ     瞳
【評】たぶん「肩寄せて」の打ち間違いでしょう。「肩寄する幼馴染やチューリップ」でいかがでしょう。

〇指あとの残る薄氷穴一つ     チヅ
【評】「指あと」の「あと」と「残る」がやや重複している感じを受けます。「うすらひに指の太さの穴ひとつ」でどうでしょう。

〇甘藍のどっしり葉巻く春の畑     チヅ
【評】「巻く」は自明ですから省略できますね。「どっ(つ)しり」も形容としてどうでしょう。「甘藍の葉のずつしりと春の畑」と考えてみました。

〇春の闇鼻息あらき獣道     妙好
【評】この形ですと、獣道そのものの鼻息みたいですね。とりあえず「春の闇獣道より荒き息」としておきます。

〇白山の祈りの風や畦青む     妙好
【評】「祈りの風」という造語が今一つでしょうか。信仰の山ですので意味はわかりますが。白山といえば「祈り」は自明ですから略せる気がします。「白山の風真向ひに畦青む」としてみましたが、ご自身でさらに推敲してみてください。

◎鷹鳩と化すや夫のジャムづくり     恵子
【評】難しい季語を上手に使った句です。退職後の夫の変わりぶりもうかがわれ、心楽しくなる句です。

◎ジャム作る夫の手際や亀鳴けり     恵子
【評】こちらも難しい季語を用いて上々の句。夫の手際を見ながら、「こんなに器用だったっけ」といぶかしげにしている作者の様子も伝わってきます。

〇~◎両膝に両手を置いて涅槃西     徒歩
【評】「両」の対句表現が巧みです。「両膝」と「両手」では揃いすぎですので、「両手」は少し調子を変えて、たとえば「両膝に両の手広げ涅槃西風」あるいは「両膝に両の手そろへ涅槃西風」とするのも一法でしょうか。

〇家族みな鼻大きなり彼岸西     徒歩
【評】「大きなり」にやや無理を感じました。「家族皆おほきな鼻や彼岸西風」などもう一工夫していただければと思います。なお「西風」と書いて「にし」と読みます。

〇~◎橋げたの影を住処に岩つばめ     桃子
【評】しっかりと観察された句です。「影」ですと、日の傾きによって位置が変わってしまいますので、この場合は物陰の意味の「陰」でしょうか。

〇梅煮とす鱗ひらめく春鰯     桃子
【評】生活感のある句ですね。「ひらめく」の句意が少しとりづらかったので、「梅煮にと鱗取りたり春鰯」と考えてみました。これで動詞も一つ減らせます。

〇三叉路の左折禁止や白木蓮     永河
【評】車を運転しないわたしは交通法規に全くうといのですが、「三叉路の左折禁止」はかなり珍しいことなのでしょうか。とりあえずは日常風景の素直なスケッチですね。

△~〇海峡や天地待ち侘ぶ花の雨            永河
【評】海峡と桜の関係がよく見えてきませんでした。また、文法的には「待ち詫ぶる」と連体形にする必要があります。句意もとりかねましたので、とりあえず「海峡を望むひと日や花の雨」としておきます。俳句は言葉で人を驚かせるのでなく、できるだけ平易に詠むのがコツだと思います。

〇地虫いづ庭に一本筋の入る     智代
【評】面白いものを発見されましたね。755という破調になりますが、「地虫出でしか一本の筋庭に」とする手もありそうです。

〇桜咲く回廊の節艶めけり 智代
【評】眼目はいいのですが、表現が今一つたどたどしい感じです。動詞を一つ減らすだけでだいぶ引き締まりますので工夫してみてください。たとえば「回廊の節艶めくや夕桜」「回廊の節の艶めき初桜」など。

次回は4月14日(火)の掲載となります。前日13日(月)の18時までにご投句頂けると幸甚です。河原地英武

「カナリア俳壇」への投句をお待ちしています。
アドレスは efude1005@yahoo.co.jp 投句の仕方についてはこちらをご参照ください。


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