日本学術会議法案の話ばかりなのですが、国会での攻防が続いているので本日もこの話題にお付き合いください。とはいえ、この記事が公開される時にはどうなっているかわかりません。6月5日木曜日にも参議院内閣委員会で強行採決されるという情報が流れていましたが、反対の声の盛り上がりもあって見送られました。次の山場は10日火曜日だそうです。
「文系の研究者だけが反対している」という誤解が、それなりに広まっているようです。菅元首相が任命拒否したのが全員文系であったこと、文系の研究者が政府の政策に異論を唱えることが多いことなどが、誤解の背景にあるようです。一般論として、文系の研究者のほうが「よくしゃべりよく書く」ので目立つのだろうと思います。しかし、ノーベル賞受賞者(団体での受賞を除くと存命しているのは全員理系)も反対していることは、都合よく忘れられてしまうようです。
また今回、研究者以外の市民の方々も、国会前や各地域で声をあげています。
学術会議前にできた市民による人間の鎖を見た時は感動しました。こういう光景は他の国のアカデミーにあっただろうか?
平均年齢層が高いと馬鹿にする人がいた。だが私は、この方々こそが日本の民主主義を守ってこられたのだと胸を熱くした。歴史を伝えようとしておられる姿#学術会議解体に抗する https://t.co/zoJIc22t1g— おきさやか(Sayaka OKI) (@okisayaka) May 24, 2025
信州の記事に関連して、「信州に縁のある大学人」の法案反対の呼びかけもありました。私も以前に信州大学で勤務していたので、賛同人に名前を入れてもらいましたが、半数程度は理工系の研究者でした。
文系の研究者が政権から嫌われる理由が「政権に従わずに批判するから」であるなら、理系の研究者も自由な研究ができなくなるのは目に見えています。またそのような事態は結局、一般の人々の様々な権利を様々な角度から制限していくことにもつながるので、このように声が上がっているのだと思います。参議院では与党が過半数をとっている状況の中、どういう結果になるとしても、このことは忘れずにいたいと思います。
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西垣順子<大阪公立大学 高等教育研究開発センター>
滋賀県蒲生郡日野町生まれ、京都で学生時代を過ごす。今は大阪で暮らしているが自宅は日野にある。いずれはそこで「(寺じゃないけど)てらこや」をやろうと模索中。老若男女、多様な背景をもつ人たちが、互いに互いのことを知っていきながら笑ったり泣いたり、時には怒ったりして、いろんなことを一緒に学びたいと思っている。著書に「学生と考えたい『青年の発達保障』と大学評価(晃洋書房)」(編著)など。