一気に冬がやってきました。寒がりのわたしはずっと暖房をつけて過ごしています。勤務先では風邪をひいている人が目立つようになりました。皆さんもお身体にご留意のうえ、お過ごしください。
〇粒揃い実る稲穂の重さかな 織美
【評】豊作を寿ぐ一句ですね。結構です。「粒揃ひ」と表記しましょう。
〇去る女の後姿や秋の風 織美
【評】「女の」というところに演歌風の通俗性が少し感じられますので、「去るひとの」くらいでいかがでしょう。
〇賀茂川とビル群つつむ冬夕焼 瞳
【評】「賀茂川」という表記ですと、出町柳以北ですね。あのへんは「ビル群」というイメージがありませんがいかがでしょう。句自体はよくわかります。
〇首塚の静寂を解く鵙の声 瞳
【評】「首塚」と「鵙の声」の取り合わせにある種のすごみを感じます。「解く」より「破る」のほうが鵙の声には似つかわしいかもしれません。
◎新調の裳裾折り来る七五三 美春
【評】情景がよく思い浮かぶ的確な写生句で結構です。
〇~◎七五三母に押されて神前へ 美春
【評】神前に出るのを少し怖がっている子供の姿が思い浮かびました。
◎思ひ出の句を語る師や室の花 恵子
【評】季語がいいですね。師と語り合う穏やかな時間が伝わってきます。
△~〇釣果無き釣り人の先鯔跳ぬる 恵子
【評】作者の意図が見えすぎてしまうのが残念です。「釣果無き」と観念的なことを言わず、客観写生に徹してほしいと思います。
△~〇秋日濃し水面の藍のいよよ濃し 妙好
【評】「濃し」の重複が気になります。また「藍」という色自体が濃いので、「いよよ濃し」が藍色の形容として相応しいかどうか、、、紺色ということでしょうか。
△~〇牡蠣筏落暉に丸く包まるる 妙好
【評】「丸く包まるる」が実感としてぴんときませんでした。「丸く」という形容詞や、「包まるる」という動詞を使わずに推敲してみてください。
△~〇木守柿熟すを烏見つめをり ゆき
【評】「熟すを」というのは作者の判断。そこはカットし、烏の行動だけを客観的に描写してください。「木守柿けふも烏が見にきたり」など。
△~〇倶楽部の師がん乗り越へて秋の宴 ゆき
【評】まず何の倶楽部か読者にはわかりません。「がん乗り越へ(え)て」も説明的。「秋の宴病癒えたる師を囲み」としておきます。前書きに「がんを乗り越えし師」と記してもいいでしょう。
〇眩しさに細きへら浮子鴨のこゑ 徒歩
【評】「眩しさに」の「に」が語法としてあいまいな気がします。また「眩し」は作者の主観ですので、そこをより客観的な言葉に置き換えるとよいと思います。「日を弾く細きへら浮子鴨のこゑ」など。
〇懇ろに窓を拭きたり冬夕焼 徒歩
【評】「懇ろに」が冬らしいですね。上五をさらに具体的にし「息かけて」とする手もあるでしょうか。場所を明確にするなら、たとえば「白き息かけ教室の窓磨く」とする方法もありそうです。
△~〇源泉の爆音近し秋の宿 白き花
【評】「爆音」は大げさすぎませんか。とりあえず「源泉の音がうがうと秋の宿」としておきます。
〇唐松の雨降る如く落ち葉降る 白き花
【評】「唐松」と「落ち葉」はワンセットなので切り離さず、近づけましょう。「唐松の落ち葉雨降る如く散る」としてみました。
〇新蕎麦の幟あふるる城下町 万亀子
【評】さすがに「あふるる」ほどはないのでは?「新蕎麦の幟ずらりと城下町」くらいでいかがでしょう。
〇秋の雨菅笠被り露天風呂 万亀子
【評】雨降りでもこんなふうに露天風呂に入れたら雰囲気最高ですね!
〇窓開けし肌さす風は師走かな 千代
【評】風の冷たさに師走を感じたのですね。語順を変えて「窓からの風肌をさす師走かな」でどうでしょう。
△~〇稲刈機新米狩りて納屋の隅 千代
【評】納屋の隅に置かれているのは稲刈機?それとも新米でしょうか。「納屋に置く新米刈りし稲刈機」としておきます。
〇赤ん坊の微笑むごとく檀(まゆみ)の実 永河
【評】ユニークな感性の句。赤んぼですから「ごとく」でなく「やうな」のほうが優しくてしっくりくるかもしれません。「あかんぼの笑みたるやうや檀の実」としてみました。
〇ミサイルは留め置くべし虎落笛 永河
【評】このような主張の句もありだとは思いますが、「べし」という強い断定に対してこの季語があっているかどうか。写生句にして「ミサイルの置かれたる町虎落笛」とする手もありそうです。
〇畝寄する尻に残り蚊いのちぎり 秋子
【評】「いのちぎり」とは瀬戸弁で「思い切り」の意味だそうですね(ネット情報)。「容赦なく尻に残り蚊畑仕事」くらいでどうでしょう。
△~〇火祭の火の粉蛍の乱舞めく 秋子
【評】この比喩はわりと類想的です。句の形としては結構です。
〇薯茹でて茶巾絞りに児のおやつ チヅ
【評】「茶巾絞り」が具体的でいいですね。美味しそうなおやつが見えてきます。
〇のっそりと田より飛び立つ冬の鷺 チヅ
【評】「のっ(つ)そりと」という緩慢な動きがいかにも冬の鷺らしく思われました。
△~〇みちのくの校舎の窓に雪螢 欅坂
【評】「みちのく」がどれほど効果的かやや疑問に思います。「窓に」もあいまい。窓に止まっていたのでしょうか。それとも窓から見えたのでしょうか。「みちのくの木造校舎雪ばんば」とすればもう少しみちのくらしくなりそうです。
△~〇湯豆腐の湯気に包まる夕餉かな 欅坂
【評】「つつまる俳句」が多くて、やや食傷気味のわたしです。夕焼けや風や湯気が出てくるとすぐに「つつまる」とやるのですが、どうしても陳腐化します。「夕餉」も大体想像がつきますので、もっと別の措辞をもってきたいところです。「湯豆腐の湯気の向うに妻の顔」など工夫してみてください。
〇落葉降る日向の匂ひ仄かにも 智代
【評】「仄かにも」が表現として今一つです。「ほのかなる日向の匂ひ落葉降る」でしょうか。
◎羊羮の厚き一切れ冬に入る 智代
【評】申し分のない即物具象句です。何も説明しなくても、羊羹の厚みに冬の到来が実感されます。
〇「負けないで」を歌ふ子たちの文化祭 久美
【評】自注に「障害を持つ子の発表」とあります。上五の字余りを解消し、中七で切れを入れましょう。「「負けないで」歌ふ子たちや文化祭」。
△~〇Nコンを目指す生徒の文化祭 久美
【評】文化祭の最中にNコンを目指すのは違和感があります。季語を変えたほうがよいかもしれません。たとえば「Nコンを目指す子たちや黄落期」など。
次回は12月17日(火)の掲載となります。前日16日(月)の午後6時までにご投句頂ければ幸いです。河原地英武
「カナリア俳壇」への投句をお待ちしています。
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