<経緯について>
旧Twitter(X)のタイムラインに8月11日(日曜)頃から、驚くような情報が流れてきました。東京の板橋区が不登校児童支援の一環として「連携」しようとしている会社についての情報です。こちらの方のポストに詳細が書かれています。
(長文ですみません)
おすすめポストで「怖い」と流れてきた、『スダチ』という会社の不登校解決プログラム。内容にびっくりして、公式サイトを確認してきた。・『スダチ』スタッフは子どもとは一切会わない。親とのオンライン面談のみ。
・再登校までの平均日数は17日。— 史 (@narano_shikasan) August 11, 2024
なお、「連携」と書きましたが、これは当該の会社によるプレスリリース上の話で、板橋区としては「話をきいただけ」であるそうです。
板橋区の記事が更新されました。連携の事実はない、話を聞いただけとの事実が明記されました。スダチに抗議していい案件だと思います。今回の件で、スダチは、区が取りうる不登校支援の多様な選択肢の一つではないことも確認してほしい。https://t.co/z7HT2kvRrw
— くらしにデモクラシーを!板橋ネットワーク (@kurademo) August 13, 2024
とはいえ、本当に話を聞いただけなのか、板橋区として保護者に当該会社のサービスを紹介したりしたのかなどの不安があり、不登校支援活動をしている団体や研究者が公開質問状を提出しています。
本日8月15日15時、板橋区長と板橋区教育委員会教育長に宛てて、有志で公開質問状を送付しました。
8月5日の「板橋区と株式会社スダチが連携、不登校支援を強化」という報道に関しての質問です。
びーんずネットも賛同者として名前を入れさせていただきました。#不登校 https://t.co/RBQFbkYidp— びーんずネット (@beansnet123) August 15, 2024
板橋区議の方が、ここに至る流れをまとめていました。
「板橋区とスダチが連携し不登校支援を強化」について、板橋区教育委員会の指導室長から経緯を聞きました。
状況を聞いたところ、
「株式会社スダチと連携し、不登校支援を試行しようとしていた事実」はありました。… pic.twitter.com/97Ge2l9rOq— 井上 温子 (@AtsukoINOUE) August 15, 2024
<「スダチ」の不登校支援の問題点>
スダチという会社の不登校支援の詳細な方法は、当会社のwebサイトからは確認できません。他方で、この会社のサービスを利用したことのある人や、この会社の代表等の著作を見たことがある方などが発言している内容から、実際に何をやっているのかを推測することは可能です。
心理学や認知・行動療法についての知識のある人から見れば、ある意味で古典的なやり方で、不登校状態にある子どもたちが、再登校をせざるを得ない心理的状況を作り出していくのだと思われます。カルトや詐欺師がターゲットをマインドコントロールする際に使う方法とも、似ているところがあります。
いずれにせよ、こうやって再登校に追い込まれた子どもたちがどうなってしまうのかは、とても心配です。スダチのwebサイトでは「学校に行ってみたけれど、叱られたりイジメられたりもせず、大丈夫だった」と子どもが言っていたという報告が掲載されています。表面的にはそうでしょうが、本当に大丈夫である可能性は高くないのではないかと思います。精神科医の松本先生によるこのような記事もあります。
松本先生が大事なことを指摘されている。
自殺した不登校児の「75%は再登校」していた 不登校児の親が「やってはいけない」ことを精神科医が伝授 https://t.co/pVumE1qmff @cocrecoOfficialより
— Tokio Uchiyama (@TokioUchiyama) August 12, 2024
<気になる政治と行政の動向>
上記とは別の区議の方が、不登校をめぐる最近の議会答弁の変遷についてコメントしていました。
2019年の一般質問。
文科省の不登校に関しての通知
「学校に戻ることを目的としない」ことの徹底について。
この後、暫くは再登校をゴールとしないことが教育委員会の答弁でも当たり前になっていたが、昨年度あたりから答弁に変化がで始め何かおかしいなと。それが今回の「スダチ」との連携になるとは https://t.co/C2j9naJLF5— 五十嵐やす子 板橋区議会議員 🍉平和と人権 (@yasuko_igarashi) August 11, 2024
また別の議員でこの会社の取組をほめている人もいるので、こういうタイプの働きかけをするべきだと考える政治家がいて、行政もそれに影響を受けているのかもしれません。ただそれは危険なことです。不登校に至っている子ども達は皆、学校には行かねばならないということをよく知っています。それでも行くことができない状態にあるということを、まずは理解してほしいです。
「この手法が有効かどうか」を議論するフェーズはとっくに終わっていて、少なくとも公的支援にこういう手法が採用されることは今後決してあり得ないということは不登校の議論と政策の歴史を少しでも知っていればわかりそうなものですね。そのくらい不可逆的な変遷を経てきてるhttps://t.co/rkXchUQi7L
— 斎藤環 『イルカと否定神学』医学書院 9月刊行予定 (@pentaxxx) August 13, 2024
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