不登校支援をめぐる危なっかしい動向

<経緯について>
旧Twitter(X)のタイムラインに8月11日(日曜)頃から、驚くような情報が流れてきました。東京の板橋区が不登校児童支援の一環として「連携」しようとしている会社についての情報です。こちらの方のポストに詳細が書かれています。


なお、「連携」と書きましたが、これは当該の会社によるプレスリリース上の話で、板橋区としては「話をきいただけ」であるそうです。


とはいえ、本当に話を聞いただけなのか、板橋区として保護者に当該会社のサービスを紹介したりしたのかなどの不安があり、不登校支援活動をしている団体や研究者が公開質問状を提出しています。


板橋区議の方が、ここに至る流れをまとめていました。

<「スダチ」の不登校支援の問題点>
スダチという会社の不登校支援の詳細な方法は、当会社のwebサイトからは確認できません。他方で、この会社のサービスを利用したことのある人や、この会社の代表等の著作を見たことがある方などが発言している内容から、実際に何をやっているのかを推測することは可能です。
心理学や認知・行動療法についての知識のある人から見れば、ある意味で古典的なやり方で、不登校状態にある子どもたちが、再登校をせざるを得ない心理的状況を作り出していくのだと思われます。カルトや詐欺師がターゲットをマインドコントロールする際に使う方法とも、似ているところがあります。
いずれにせよ、こうやって再登校に追い込まれた子どもたちがどうなってしまうのかは、とても心配です。スダチのwebサイトでは「学校に行ってみたけれど、叱られたりイジメられたりもせず、大丈夫だった」と子どもが言っていたという報告が掲載されています。表面的にはそうでしょうが、本当に大丈夫である可能性は高くないのではないかと思います。精神科医の松本先生によるこのような記事もあります。

<気になる政治と行政の動向>
上記とは別の区議の方が、不登校をめぐる最近の議会答弁の変遷についてコメントしていました。


また別の議員でこの会社の取組をほめている人もいるので、こういうタイプの働きかけをするべきだと考える政治家がいて、行政もそれに影響を受けているのかもしれません。ただそれは危険なことです。不登校に至っている子ども達は皆、学校には行かねばならないということをよく知っています。それでも行くことができない状態にあるということを、まずは理解してほしいです。


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西垣順子<大阪公立大学 高等教育研究開発センター>
滋賀県蒲生郡日野町生まれ、京都で学生時代を過ごす。今は大阪で暮らしているが自宅は日野にある。いずれはそこで「(寺じゃないけど)てらこや」をやろうと模索中。老若男女、多様な背景をもつ人たちが、互いに互いのことを知っていきながら笑ったり泣いたり、時には怒ったりして、いろんなことを一緒に学びたいと思っている。著書に「本当は怖い自民党改憲草案(法律文化社)」「大学評価と青年の発達保障(晃洋書房)」(いずれも共著)など


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