山里の桜が散り始めた頃、棚田の景色を見に行った。そろそろ稲作の準備に掛かろうかと言う時まだ水田に水は張られていない。男の子が生まれたのだろうか一足早く屋根より高い鯉のぼりが掲げられたお家を久しぶりに見た。比較的広い区画の棚田が有る谷から一山超えると小さな谷あいの集落が現れた。大型の機械が入れそうにない小さな棚田。急斜面に石垣が築かれ水路には勢いよく水が流れている。暫くするとこの棚田にも水が張られることだろう。しかし、全部の水田に水が張られる事は無いのかもしれない。石垣が築かれた平らな場所に結構大きな木が生えている所もある。かつては、棚田だったのだろう。その奥に獣害対策用のフェンスが見える事から放置されてからそんなに長い年月が経ってしまった様子ではない。自然破壊が進む一方で人が作り上げ長年維持してきた景色が自然に飲み込まれて行くのも結構早い。それに伴う文化もまた同じかもしれない。
京滋有機農業研究会 会長の田中真弥さんが無減農薬野菜などの宅配サービスの会員向けに連載しているコラム「こころ野便り」を当サイトにも掲載させて頂いています。前回はこちら。