先生からの退職記念品として手書きの般若心経をプリントした手ぬぐいが配られた。般若心経の文字の上から大きく「抜山蓋世　我らは行かん心して　友よ人生辛いが怠る事勿れ」と書いてある。鬼に挑んだ少年時代、有機農業に出会った時のトキメキや北海道・京都間を歩き切った時の充実感。実際に農業を始めて思い通りにならない事が多い中　薄れていた初心と青臭いが若い勢いを思い出させてくれる言葉だった。そして般若心経を読んでみて自分の育てた野菜を「あるがままの京野菜」と呼んでいるもののいつも理想の野菜像と比べている事に気付く。今尚あるがままを受け入れる事の難しさと揉み合っている。色即是空　空即是色の境地にはまだまだ至れないが青臭い理想を追い続けるのも悪くないと思う。最後に寄せ書きの色紙に大きく「先生　大好き」と書いておいた。

京滋有機農業研究会 会長の田中真弥さんが無減農薬野菜などの宅配サービスの会員向けに連載しているコラム「こころ野便り」を当サイトにも掲載させて頂いています。前回はこちら。