騙されないでくださいートランスジェンダーに関するデマが酷い

6月16日金曜日に、LGBT理解増進法が成立しました。当事者や支援者の人たちが「ないよりはマシ」と評価する法案だったものが、維新の会と国民民主党による修正案を自民・公明が丸呑みする形で変更され、「これでは差別増進法だ」という批判が寄せられるものになりました。新しく成立してしてしまった法律の内容については、別の機会に見ることにしたいのですが、本日は、私の身の回りでも聞くようになってしまったデマについて、書こうと思います。
そのデマとは、性的マイノリティの人々に「寛容な社会」になれば、「女子トイレがなくなり、銭湯の女湯に男性が入ってくることになり、性犯罪が横行する」という内容のデマです。「トランスジェンダー当事者から女性を守れ」という、トランスジェンダー当事者を犯罪者扱いするスローガンが巷にあふれるようになり、国会の審議でも「女性が被害に遭う懸念」に関する質疑に多くの時間が割かれていました。政府の答弁はそのような懸念を否定していましたが、不安をあおりたい人達は聞く耳を持っていないようで、今に至るまで根拠のない不安をあおり続けています。


私も知り合いから、「女性用トイレがなくなるとかネットで流れて来るけど、本当?(そんなわけないですよね)」というトーンの質問を受けることがあり、さすがにこれはまずいのでは…?と思い始めました。Womans Action Networkからも緊急声明が出されています。


以下、女性用トイレと公衆浴場について考えたいと思います。トイレや公衆浴場などの男女別施設をトランスジェンダー当事者が利用できるかどうかについては、こちらに法的な検討をした論考があります。


まず公衆浴場に関しては、性自認に関わらず、身体が男性である人が女風呂に入ることは認められないことが明確です。上記の論考でもそのように書かれていますし、国会でも政府がそのように答弁しているのを聞きました(公衆浴場法という法律があり、それに従った対応をすると答弁されていました)。
女性用トイレについては、「女性用トイレがなくなる(ジェンダーフリートイレばかりになる)」というデマと「女性用トイレに男性が入りたい放題になる」というデマがあるようです。
ジェンダーフリートイレですが、飛行機や新幹線、小規模な飲食店やコンビニなど、現在でも普通に存在しています。ショッピングモールや学校・病院などの規模の大きな施設では、男性用トイレと女性用トイレがあり、そして「みんなのトイレ」などと呼ばれる誰でもが使えるトイレがあります。「みんなのトイレ」は最初は、身体に障害のある人向けのトイレでしたが、子どもと一緒に入る必要がある人、大きな荷物を持っている人なども含めて、通常のトイレでは不都合のある人達が誰でも使えるトイレになってきました。その中に、トランスジェンダーの人も含まれます。オープンキャンパスのイラストただそうなってくると、「みんなのトイレ」の数が少なすぎるという問題が発生しています。ジェンダーフリートイレと呼ぶか、みんなのトイレと呼ぶかはさておき、誰でも使えるトイレの数を増やしてほしいという要求はありますが、女性用トイレをなくせという要求など、LGBT当事者から上がってはいません。ちなみに私が勤務している大阪公立大学では、2025年に新しく設置される森之宮キャンパスにおいて、ジェンダーフリートイレ(呼び方はまだ決まっていないと思いますが…)も作る計画です。同じフロアに、男性用トイレも女性用トイレもあります。各自が使いたいものを使う、ただそれだけのことです。

女性用トイレについては、普段は服に隠れている部分を出すのは個室内に限られることなどから、トランスジェンダー女性の女性用トイレ使用は認められるべきだと、上の論考でも書かれています。その上で、「それを認めると性犯罪目的の男性が入ってくる」という言説は、とても不可解なものだと思います。現在でも、性犯罪目的で女性用トイレに入ってくる男性はいるわけで、トランスジェンダー当事者を排除することによってではなく、防犯対策をしっかりと実施することで防ぐべきです。また、「男性の格好をした人が入ってきたら困る」と言われることがありますが、トランスジェンダー女性であれば、女性の格好(服装)をしています。さらに、仮に性犯罪者が性自認を偽って女性用トイレに入ってきたとしても、その人が「性自認が女性だと偽って入ってきた」ことは、警察が少し捜査すればわかることです。
国会周辺等では、16日金曜日に成立してしまったLGBT理解増進法に反対する集会が、毎日のように開かれていました。その中のスピーチを1つ、最後にご紹介します。


———–
西垣順子<大阪公立大学 高等教育研究開発センター>
滋賀県蒲生郡日野町生まれ、京都で学生時代を過ごす。今は大阪で暮らしているが自宅は日野にある。いずれはそこで「(寺じゃないけど)てらこや」をやろうと模索中。老若男女、多様な背景をもつ人たちが、互いに互いのことを知っていきながら笑ったり泣いたり、時には怒ったりして、いろんなことを一緒に学びたいと思っている。著書に「本当は怖い自民党改憲草案(法律文化社)」「大学評価と青年の発達保障(晃洋書房)」(いずれも共著)など。


Warning: Use of undefined constant php - assumed 'php' (this will throw an Error in a future version of PHP) in /home/canaria-club/www/wp-content/themes/mh-magazine-lite/content-single.php on line 21

Warning: Use of undefined constant php - assumed 'php' (this will throw an Error in a future version of PHP) in /home/canaria-club/www/wp-content/themes/mh-magazine-lite/content-single.php on line 30