菅政権のときに起きた、日本学術会議会員の任命拒否問題について、当時に連載で記事を書きました。6名の任命は拒否されたまま、問題は何も解決されないまま、会員の任期満了に伴う新会員の選考が始まっています。現在は学会等に対して、会員候補者となる研究者の情報提供依頼が来ているところです。
任命拒否問題発生当時、任命拒否という問題行動をとっているのは政府であるにもかかわらず、「日本学術会議を改革しなければならない」という意見が政府や自民党から出てきて、マスコミなどもその論調に乗って行くという現象がありました。その後、政府側からの動きが小さくなった時期もあったのですが、11月になって突然にNHKによる報道がありました。
日本学術会議改革で法改正へ 第三者委員会設置など明記 政府 | NHK https://t.co/GxmqCphNEr
「透明性を高めるため、組織運営などに意見を述べる第三者委員会の設置」
10年おきの見直しの筈が6年おきにされるし、色々ひどい— おきさやか(Sayaka OKI) (@okisayaka) November 23, 2022
日本学術会議法の変更の方向性に関する報道でしたが、この時点で政府から日本学術会議に対して、何の説明もありませんでした。日本学術会議としては、報道の内容が正しいのかどうかの判断もできない状態であり、梶田会長から抗議声明が出されました。
https://www.scj.go.jp/ja/head/pdf/20221128.pdf
(PDFファイルが開きます)
そしてようやく政府側からの連絡があったのですが、NHKの報道の通りの内容でした。これでは日本学術会議の独立性が担保できませんし、海外の同様の組織からも対等な存在と思ってもらえなくなる可能性が大きいです。
防衛費や統一教会の件であまり話題になっていないですが、日本学術会議の状況はどう考えてもまずいです。現在提案されている内容が通ったら、「学問の自由」としては獲得したものが何十年も後退する。
— おきさやか(Sayaka OKI) (@okisayaka) December 11, 2022
実際に学術会議でも異論が続出しています。
日本学術会議総会で政府方針に異論続出 https://t.co/JHMDvPir1v
— おきさやか(Sayaka OKI) (@okisayaka) December 16, 2022
冒頭で書いたように、すでに新しい会員の選考が始まっているにも関わらず、「第3者委員会が選考に関与する」として、選考プロセスを延期するようにという指示も来ています。すでに始まっている選考プロセスを停止させるということは、人事への介入開始と言ってよいのではないでしょうか。
社説:学術会議改革の政府案 御用機関では意味がない | 毎日新聞
“一昨年秋、当時の菅義偉首相が会員候補のうち6人の任命を拒否したことが発端だ。長年の慣行を覆した理由を菅氏は示さず、組織改革に問題をすり替えた。透明性が欠如しているのは政府である”
その通り!👍 https://t.co/8yGWmkxuml
— Komagome Takeshi (@KomagomeT) December 14, 2022
政府が前のめりに軍産学官の連携を押し進めようとしている下では、政府も「第三者」ではありえない。むしろ大学の知の「私物化」をねらう当事者。
「透明性」をめざすというが、政府の意向を忖度する人物に会員選考をやらせることで不透明な人事がまかり通ることになるだろう。https://t.co/A45QZpDjP0— Komagome Takeshi (@KomagomeT) December 7, 2022
なお、菅政権時代の経緯から今日に至るまでの振り返りと、現在起きつつあることの詳細については、東大教授で日本学術会議連携会員でもある隠岐さや香さんが、こちらの動画で詳しく話しています。
個人的にはこの方の記事にツッコミを入れたくなりました。
「米国の機関が参考になる。学術界が政府に積極的にアクセスして、担当者が政府の課題や状況をこまめに調べる」
本日から話題を逸らす説明。米国は会員任命手続きに第三者を介入させてなどいない。人事と連携は別。https://t.co/PPSraJxzyK— おきさやか(Sayaka OKI) (@okisayaka) December 15, 2022
米国の学術界の話をしているつもりのようですが…。
はい、米国では「学術界_が_政府に積極的にアクセスして…」であって、政府_が_学術界に不法に介入したりしていませんよ。自民党の皆さん、ちゃんと参考にしてください。
あと日本の学術界も、普通に政治や社会にアクセスしていますから(それなくして研究できませんから)。 https://t.co/TXl5GC6BaG— Junko Nishigaki (@JNishigaki) December 16, 2022
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西垣順子<大阪公立大学 高等教育研究開発センター>
滋賀県蒲生郡日野町生まれ、京都で学生時代を過ごす。今は大阪で暮らしているが自宅は日野にある。いずれはそこで「(寺じゃないけど)てらこや」をやろうと模索中。老若男女、多様な背景をもつ人たちが、互いに互いのことを知っていきながら笑ったり泣いたり、時には怒ったりして、いろんなことを一緒に学びたいと思っている。著書に「本当は怖い自民党改憲草案(法律文化社)」「大学評価と青年の発達保障(晃洋書房)」(いずれも共著)など。