今年の春から大学で、社会福祉を専攻する学生さんに社会保障論を教えているのですが、ここのところの授業中には未来を憂う雰囲気が、どんよりと重くのしかかってきます。秋が深まり、寒い時期に突入し、気分が少し後ろ向きになったから…だけではなさそうです。テーマは、年金、医療保険、介護保険、生活保護などの私たちの暮らしを支える各種制度です。個々のところ、現役世代の将来の負担を軽減するために、負担額の増額のニュースもしばしば見聞することも交えて、授業中に考えています。
大人数の学生さんを対象に、講義スタイルでやっている授業なので、学生と講師とのコミュニケーションツールは、レポートです。私が問うことに応えていただくのですが、最後には必ず「感想や質問を書いてください」という項目を設けています。そして、質問があれば次の授業の時に、私の見解を伝えたり、考え方やニュースで見るポイントを伝えたりしています。
質問は素朴な疑問が多く興味深いものです。それはいいのですが、一方で、感想がすっかりどんよりとした空気感になっています。
社会保障制度は、その財源が超高齢化と少子化な社会の人口動態や経済状況に左右されます。学生にとっては、今までは子どもとして保護され、当たり前に医療サービスが受けられていた時期から、成人になり今後は社会に出て保険料や税金を負担する側にかわる年代になってきたことで、いろいろと考え想像されているのでしょう。今までは、与えてもらえる側だったものが、今後は、自分たちで考え判断し、社会を作る側に参加することが大切であると、少しずつ実感がでているのかなと思います。
単に制度の使い方や決まりを覚えるだけであれば、資料を読めばわかります。それ以上に、大学で学ぶということは、そこから社会について知り、考え、自分なりの意見を持ち、行動につなげていくための基礎作りになるようなものであることが大切であると思います。ですので、どんよりとした気持ちになりながらも、未来に目を向け、どうしたらいいのか考えてもらえることも、大切で大きな一歩です。
最近では、今年の10月から後期高齢者の方の医療負担が2割になる方が現れたり、ニュースでは今後も高齢者の医療福祉に関する負担の増大見込みが報じられたりと、変化の速さと多さに驚くばかりです。その変化もスピード感もしっかりとらえて、若い世代の多くの人たちと、これからの社会がどうあればいいのかを考えていきたいなぁと思う、秋の日。
日が短くなると気持ちも落ち込みやすいのですが、それでも、また春が来ることを楽しみにしつつ、日々コツコツと見聞きして未来について考えて、過ごしていきたいものです。