「心をコントロールしたい」ということ(1)

前回の記事で、メンタリストと自称して活動しているDaiGo氏のYouTubeでの発言について取り上げました。その発言内容そのものではないのですが、この事件をきっかけに何人かの心理学研究者が、「メンタリスト」と自称しながら心理学の知見の一部らしきものを使って、様々な発信が行われていることに対する懸念や問題意識を、ネット上で表明していました。
あくまで私の理解ですが、「メンタリスト」という自称は、「他者の心を読み取ったり、自分や他者の心を思うように操ったりする方法をよく知っている人」というような意味と思います。心理学研究者が懸念を示すのは、そこで使われる「心理学の知見」が偏っていたり誇張されていたりして、心理学という学問をしている立場からは、大きな抵抗感を感じるということだと思われます。しかし実際のところ、彼のYouTubeのフォロワーの数は、日本で最大の心理学会である日本心理学会の会員数よりも多いとい うことで、心理学の研究者としては「困ったなあ…」という本音が湧くのでしょう。
心理学という学問は、学生からは大変人気があります。しかし、学生が想像する心理学と大学で学ぶ心理学には結構な違いがあるので、ギャップにショックを受ける学生もいます。このこと自体は今も昔も同じなのですが、私自身は6-7年くらい前から、「変わってきたな」という印象を持つようになりました。
それより以前は心理学の印象というと、「心の病や心のしんどさを癒す」という感じのものが多かったのです。心理カウンセラーのイメージが基盤なのだと思います。それが近年は「人の心を読めるようになれる」「心をコントロールできる」というものが増えてきました。私が、行きつけの美容師さんとの会話から、「メンタリスト」という存在を知ったのはその頃でした。最初の頃は「たまにそういう学生がいる」という程度だったのですが、最近は、心理カウンセラーのイメージよりも、メンタリストのイメージのほうが多くなってきたように思います。
振り返ればそれよりももっと前、2000年前後くらいの時期に、心理カウンセラーである主人公が日常会話などをしながら、「今、~って考えましたね」とズバリを言い当てるというシーンが登場するドラマなど流行りましたが、もちろん物語の中でのことです。「そういう能力を身に着けたいから、心理学を学びたいです」といって、学生が教室に現れる日が来るとは、正直思っていませんでした。
(次回に続く)
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西垣順子<大阪市立大学 大学教育研究センター>
滋賀県蒲生郡日野町生まれ、京都で学生時代を過ごす。今は大阪で暮らしているが自宅は日野にある。いずれはそこで「(寺じゃないけど)てらこや」をやろうと模索中。老若男女、多様な背景をもつ人たちが、互いに互いのことを知っていきながら笑ったり泣いたり、時には怒ったりして、いろんなことを一緒に学びたいと思っている。著書に「本当は怖い自民党改憲草案(法律文化社)」「大学評価と青年の発達保障(晃洋書房)」(いずれも共著)など。


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