日本最北端の碑の向かいにある民宿に一泊した。10月5日出発の朝、民宿のおばさんが一人見送ってくれた。碑を背に大きな荷物を背負ったあの時の自分の写真。おばさんが、撮ってくれた。今も大切にしている。1日目の行程は、稚内の市街地を超えて日本海沿いの一本道に差し掛かった辺りでテントを張った。35㎞位だろうか。想像以上に体は、疲労していた。肩、股関節、膝、足首から足の甲にかけてかなり痛みが出ていた。足の親指は爪が紫色に変色し、30日後にその爪は、取れることになる。足の裏には、マメが幾つも出来ている。針に糸を通し水の溜まったマメを突き破り糸の両端を少しマメから出して糸を残したまま切る。そこにヨウドチンキを垂らすと激痛が走る。でもこれで消毒完了。とりあえず体の手入れをして大きな羊羹とカップラーメンを食べた。日が暮れると大きな月が昇っていた。期せずして満月の様だ。道路から見えない様に草原に張ったテントには、影絵のように風になびく芒が映る。煌々と月明かりに照らされたテントの中で一睡も出来ず朝を迎えた。辺りが明るく成り始めると眠気が襲ってきた。そこそこ鍛えていたはずなのに歩きの旅がこんなにきついなんて。少し眠ったかな。でも日が昇る頃には、また歩き始めた。
京滋有機農業研究会 会長の田中真弥さんが無減農薬野菜などの宅配サービスの会員向けに連載しているコラム「こころ野便り」を当サイトにも掲載させて頂いています。前回はこちら。