柚子唐辛子ができるまで(6)

前回の続きです。自然栽培での農業に取り組む障害福祉サービス事業所おもやの所長小川緒理江さんへのインタビューです。

 

(おもやさんが大切にしていることはなんですか?)

おもやで一番大切にしていることは、”みんなで働く”ということです。法人自体が、”みんなで働く””みんなで暮らす””みんなで笑う”ということを大切にしていてて、だからスタッフが、ただの指導員になったらあかんし、利用者さんが与えられた仕事さえすればOKではない。

 

(働くことの意味や価値を皆さんどんなふうに感じておられますか?)

目の前で野菜が売れるところを見る機会は実はそんなに多くはない。でも、出荷するときにお店に並べてたら、並べてるハタからお客さんが「おもやの野菜待ってたのよー!」と言ってくれたりすることがある。おもやの野菜をめがけて買いに来てくれた人にたまたまタイミングが良く会えることが時々あったりする。宅配で野菜を送ったお客さんからお礼の手紙が届いた時にみんなでその手紙を読んで「うれしいね」と話しあったりする。実際にわかりやすいのはそれぐらいかな。

 

お客さんが喜んでくれているよーっ、という話を聞いて自分の仕事と繋がる人は繋がるけど、それが繋がらない人でも、収穫の時に「こんなに大きいのがとれたー!」とか、できたものを食べてみて「おいしい!」とか、「これはイマイチやったなー」とか、そういうことをみんなで言い合ったりしています。去年は固定種の種できゅうりを作ってみたらものすごい苦かった。もともと苦いきゅうりの種類らしくて「昔は漬物などにしていたから苦くてもいけたのかな」と話したりしてたんですけど。(笑)

(自然の中でやってたら、そういうことも起こってくる。その年の雨の量や気温や日照量でも変わってくる。それをみんなで笑いながらやっている?)

間違いない品種もあるんです。F1種で、今の現代人の味覚に合わせて改良されていたり、病気に強いとか育てやすいとか…。間違いはないんですけど、次世代に種も残せない野菜。それは私たちが大切にしていることとはズレるなと思って固定種や在来種の野菜を育てたいと思っているんですけど、初めて取り組んだ野菜はそんなことに失敗があったりもします。

 

(そういうチャレンジも含めてやっていく。)

そうですね。一つの作物に絞ってないからそこで失敗してこけてしまっても他の作物でカバーができたりもしますが、失敗を笑い飛ばして次につなげたいという気持ちが根っこにあるからかな。失敗したらしたで次に繋がるから勉強にもなるし、こけてもタダでは起きない(笑)

 

(失敗することも含めて自然の流れの中でやっていく、そういうやり方をしていることで何か感じることはありますか?)

「作物も人も一緒や。」とうちの代表がよく言うんですけど、福祉の世界で支援の仕事ができる人は農業もできる。支援っていうのは相手の人が今何を求めてはるか、何を困ってはるかじっくり見極めて、直接声に上がってこないこともあるけれども、実は困ってはることもあるし、それをしっかり見極めたうえで、そこにあった支援をするというのは大事。農業もそれと一緒で野菜が今何を求めているのか、機械じゃないから何時に水をやったらいい、何日おきにこれをやったらいい、っていう事ではなくて気温や天候で日々変わるし、去年と同じものを育てていてもまったく同じでは絶対にないし、何が必要か見極めないといけない。必要以上のことをしてしまうと「もうしんどいわー」と向こうが悲鳴を上げる。

 

人も野菜も一緒。土も野菜も無理や負担をかけるようなことはしたくない。化学肥料を使い続けたら、最終的にはその土が痩せてしまって…。それは自然な形じゃない。自然栽培では土の中の微生物の力でそれが野菜の栄養になるんだけれども、その微生物ですら住めない土になってしまう。微生物の力がないから肥料で補う。となってしまうと、負の連鎖になってしまうかな。


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About 坂本彩 41 Articles
坂本彩(彩社会福祉士事務所) 大学卒業後、20年間、知的障害のある人とかかわる仕事をする。2017年に、独立型社会福祉士事務所を開業。福祉施設のアドバイザーや研修講師、成年後見人の受任、大学の非常勤講師などをしている。障害のある人もない人も一緒に「学び合いの空間づくり」をしていきたい。社会福祉士、介護福祉士、障害者相談支援専門員、そのほか、漢方養生士指導士、漢方スタイリスト、薬膳アドバイザーの資格も持つ。