著者の生まれは、現在の神奈川県川崎市土橋、たった50戸の農村だった。現在では、7000世帯が暮らすオシャレな町らしい。高度成長期までは、江戸時代とあまり変わらない生活が続いていたという。私の母も農村育ちで、嫁ぐまでの昔話を聞いていると「江戸時代とあまり変わらんな~」と思っていた。江戸時代とあまり変わらないということは、それ以前ともそんなに変わらないのかもしれない。忘れられかけていた納屋に貼られた「黒い獣のお札」は、明治以前の神仏習合や山岳信仰を遡り、縄文時代の素朴な自然信仰への旅に誘ってくれた。その旅は、田畑を潤す遠く離れの水源の森奥深い山々へと続く。そして現在も山奥でその信仰が脈々と受け継がれていることを知る。私が、お正月に「畑の神さん参り」を始めたのも自然に対する百姓の心を形にして表したかったからだ。自然と共に生きる者として共通の思いが有るのかもしれない。
京滋有機農業研究会 会長の田中真弥さんが無減農薬野菜などの宅配サービスの会員向けに連載しているコラム「こころ野便り」を当サイトにも掲載させて頂いています。前回はこちら。