かわらじ先生の国際講座~迷走する米国に同盟国はどう対応すべきか?

画像なし米国とイスラエルによるイラン攻撃、それに対するイランの反撃が始まって3週目に入りました。3月12日、イラン国営テレビは新最高指導者モジタバ・ハメネイ師の声明として(ただし本人の姿や肉声はなし)、米国などへの徹底抗戦やホルムズ海峡封鎖の継続を呼びかけました。

米国のトランプ大統領は終始強気な発言を行っていますが、米政府は本当にイランを屈服させられると考えているのでしょうか?トランプ氏の発言とは裏腹に米国の政策は迷走し始めているように見えるのですがいかがでしょう?

トランプ政権の政策が場当たり的になってきている感じは否めません。その一つは、ロシアへの宥和姿勢です。米政府は3月12日、制裁対象としてきたロシア産原油と石油製品に関して、すでに海上輸送中のものに限るという条件付きながら、約一カ月にわたり、各国の購入を認めると発表しました。対イラン攻撃に伴う原油価格高騰への対応策とのことです。当然のことながらウクライナのゼレンスキー大統領はただちに反発し、ロシアの利益は100億ドルに達するだろうとの試算も示しました。

画像なしこうしたロシアに対する制裁緩和はNATO諸国としても納得できないのではないでしょうか?

はい。フランスのマクロン大統領も制裁解除は正当化できないと強調し、ドイツのメルツ首相もこの措置は間違いだと断じ、英国の報道官もロシアへの圧力は継続すべきだと述べました。


画像なし米国と他のNATO諸国との間に不協和音が生じていると見ていいのでしょうか?

それはかなり顕在化してきています。特に印象的なのは「親トランプ大統領」と目されてきたイタリアのメローニ首相の発言です。同首相は3月11日の議会演説で、米国・イスラエルによるイラン攻撃は「国際法の枠外の介入」だとし、イランの女子小学校への爆撃を「断固として非難する」と声明し、責任の所在解明を訴えました。そしてイタリアはイラン攻撃に参加していないし、参加するつもりもないと断言したのです。
米国とイスラエルによるイラン攻撃に当初から最も批判的だったのはスペインでした。サンチェス首相はこの攻撃を国際法違反であると言明し、スペインの米軍基地使用を拒んだのです。これに激怒したトランプ大統領は、スペインに対する全面的な禁輸措置をちらつかせて威嚇しましたが、スペイン政府は屈しない姿勢を示しています。

画像なしトランプ政権は現在、ホルムズ海峡を航行する船舶を護衛するための艦船を派遣するよう7カ国と協議中だと言われていますが、協議はまとまるのでしょうか?

この7カ国がどの国をさすのか、トランプ大統領は明言していませんが、少し前に、日・中・仏・韓・英の5カ国を名指ししていましたので、この5カ国が含まれることは確かでしょう。興味深いのはアジアの国が3カ国も入っていることです。NATO諸国にそっぽを向かれたので、これらアジア3カ国に頼らざるを得ないというのが本音でしょう。イランと良好な関係にある中国を含めたのは、イランの攻勢を抑えたいとの思惑でしょうか。

画像なし3月19日には高市首相が訪米しますが、日米首脳会談ではこの護衛艦のことも話題になりますね。その場合、日本はどのようなスタンスをとると考えられますか?

まさに現在、国会で議論されているテーマですね。高市首相によれば、まだ米国から正式に自衛隊派遣の要請は受けていないとのことですが、今は法的な観点を含めて、日本として何ができるか総合的に検討している最中とのことです。

画像なし自衛隊の派遣もあるということですか?

法的観点からいえば、これは日本国の「存立危機事態」には相当しませんので、自衛隊法に基づく「海上警備行動」が発令し得るかどうかという問題になるようです。高市首相自らも国会で答弁しているように、「海上警備行動」は、相手が海賊船等の不審船であればともかく、イランのような国家の場合には適用外となります。つまり法的には、自衛隊艦船の派遣は極めて難しいといわねばなりません(これは小泉防衛大臣も認めているところです)。しかし、トランプ大統領を相手にこうした日本国内の法律論が通るのかどうか。高市首相にはNATO諸国のリーダーたちのように、筋を通してもらわなくてはなりません。それが民主主義国家の証しです。

画像なしスペインは対イラン攻撃のための国内の米軍基地使用を拒みました。他方、日本はすでに横須賀米軍基地を母港とするイージス艦2隻がイラン攻撃に参戦していますし、これに加え、在沖縄米海兵隊の第31海兵遠征部隊が派遣されました。戦地への到着は1~2週間後と言われています(『京都新聞』3月15日「表層深層」)。自衛隊の艦船が出動しなくても、基地提供という形でイランの敵意を買っているのではありませんか?

それは言えますね。今後、米国によるイラン攻撃がさらにエスカレートすれば、その出撃拠点を提供している日本も敵国認定され、日本の船舶が標的となるリスクは十分にあります。米国に歯向かうことも恐ろしいが、イランの敵意が日本に向くことも脅威です。まさしく政治のジレンマです。
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河原地英武<京都産業大学国際関係学部教授>
東京外国語大学ロシア語学科卒。 同大学院修士課程修了。 専門分野はロシア政治、安全保障問題、国際関係論。 俳人協会会員でもある。 俳句誌「伊吹嶺」主宰。


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