かわらじ先生の国際講座~米国はイランの政権交代を目指すのか?!

画像なし米国とイランは2月17日、スイスのジュネーブで核問題に関する協議を再開するとのことです。イランに核兵器開発を放棄させることが目的で、そのためにはイランがウラン濃縮度を低減することに合意しなくてはなりませんが、イラン側はそもそも核兵器の獲得を目指していないとし、ウラン濃縮は平和利用のためだと主張して、交渉は平行線をたどっていました。しかしつい最近、イラン側はにわかに態度を軟化させ、妥協の可能性を示唆しています。


イラン側の妥協姿勢は本物とみていいのでしょうか?また、今回の交渉は何かしらの合意が得られるのでしょうか?

イランの現政権がピンチに立たされているのは確かで、この交渉で妥協を示さないと自らの権力が危ういとの自覚はあるはずです。

周知のように昨年6月、イスラエルとともに米国がイランを空爆しました。さらに米国はイランへの経済制裁を強化しましたが、9月には国連もイランへの制裁を復活しました。そのせいでイランの経済は大打撃を受け、生活悪化への不満を募らせた国民は昨年末から大規模なデモを展開し、政権打倒を掲げるほどに急進化しました。政府の治安部隊が力ずくでこれを鎮圧しましたが、死者は6000人とも数万人とも言われています。政府当局がインターネット規制し、電話回線も制限しているため、正確な情報はいまだに不明ですが、ともかく非常な犠牲を出す中で、とりあえず事態は沈静化した模様です。

画像なしということは、もう一度政権を揺るがす「激震」が起これば、ハメネイ師体制は持ちこたえられないところに来ているのでしょうか?

そうだと思います。デモの時、政権交代が起こらなかったのが不思議なくらいです。米軍が介入していれば、政権は崩壊していたかもしれません。トランプ大統領もその可能性をほのめかし、デモをしている人々を鼓舞しましたが、行動には移しませんでした。反体制派を支援するため衛星通信サービス「スターリンク」の末端約6000台をイラン国内に密輸した由ですが(『京都新聞』2月14日)、軍事措置はとらずじまいでした。

しかし、今回はあからさまに軍事的な威圧をかけています。米国はすでに中東海域に原子力空母「エイブラハム・リンカーン」を配備していますが、トランプ大統領はこれに加え、2隻目の空母(「ジェラルド・フォード」で、対ベネズエラ作戦のためカリブ海に配備していたものを使うようです)も追加派遣すると発表しました。交渉が決裂した場合に必要となると説明し、武力行使も辞さずという構えを示しているのです。

画像なしイラン側も妥協せざるを得ない状況に追い込まれていることが推察されますが、これで長年の核問題が合意をみると期待してよいでしょうか?

イラン政権内では依然としてハメネイ師を始めとする強硬派が力を握っていますので、楽観はできませんが、かりにイラン側が歩み寄ったとして、米国側が従来の要求にとどまるかどうかも疑問です。

画像なしどういうことでしょう?

米国側はイランが核開発計画を放棄するだけでなく、弾道ミサイル開発を制限することも交渉のテーブルに乗せるつもりです。イランとしては核問題以外の交渉には応じない姿勢をとっていますから、今回の交渉も難航しそうです。

しかし、トランプ政権の目標はもっと別のところにあるのではないかとわたしは考えています。つまりイラン産原油が標的ではないかとみています。イラン産原油の輸出先の8割以上が中国です。トランプ大統領は2月6日、イランと貿易する第三国に追加関税を課すことができるとする大統領に署名しましたが、その眼目はイランから大量の原油を購入している中国の締め出しだと思われます(こうした見方については『京都新聞』『讀賣新聞』2月16日を参照)。

画像なしつまりトランプ大統領の関心は核問題だけでなく、イランの石油利権でもあるということですか?ベネズエラのケースとそっくりではありませんか?

そうです。ベネズエラにおける「成功事例」がトランプ大統領の対イラン政策に大きな影響を及ぼしていると感じられるのです。となるとトランプ氏は、ベネズエラのマドゥロ大統領を排除したように、イランからハメネイ師を追放することも視野に入れているのではないでしょうか。現にトランプ大統領は2月13日、記者団から「イランの体制転換を望むか」と問われ、「それが最善のように思える」と語りました。ただし新たな体制については明言を避けましたが(『讀賣新聞』2月15日)。

それを見越してかどうか、イランの反体制派勢力も次期政権への意欲を示しています。1979年のイラン革命で倒された親米派王制の元皇太子レザ・パーレビ氏が2月13日、ミュンヘン安全保障会議に参加し、各国の首脳に自らの存在をアピールしたほか、14日には大規模な集会を開いて、次の指導者としての務めを果たすと語りました(『朝日新聞』2月16日)。
トランプ大統領としては、イランが民主化するかどうかは二の次で(その点はベネズエラの場合も同様でした)、親米政権が樹立され、イランの石油を始めとする利権を米軍が優先的に得られることが肝心なのでしょう。今回のイランとの交渉が決裂したことを口実に、米国が軍事力でイランの政権を倒し、パーレビ氏と手を組むというシナリオもあり得るのではないかと推察します。
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河原地英武<京都産業大学国際関係学部教授>
東京外国語大学ロシア語学科卒。 同大学院修士課程修了。 専門分野はロシア政治、安全保障問題、国際関係論。 俳人協会会員でもある。 俳句誌「伊吹嶺」主宰


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