
だけど。私はそれでも、それを知った上でも思う。死ぬ人のその行動は尊重してあげたい、と。尊重してあげる世の中であってほしい、と。
死を選んだことを認めず、個人を責めることは、結局彼や彼女を重く取り囲んでいた問題の複合を、すべて無化してしまう思考じゃないのか。死んでしまう人のやむを得なさを認めてあげたい。なぜ死んだのか。彼がそれを選ぶのは合理的に道理だ。幸福追求的な行動だったのだ。だって今あるマイナスの幸福(不幸のこと)が、この先もっとマイナス方向にふくらむことが見通せる場合には、そのマイナスから離れることが、つまり不幸福不追求の動きになる。つまり幸福追求の動きだと言えるじゃないか。
そうとしか言いようがないくらい彼の状況はひどいものだった。その状況は、彼をとりまく半径百メートルの範囲のことだ。だけど、その半径百メートルだけがたまたまひどい状況だった、などと言えるだろうか?さらにその周囲の半径一キロの範囲で歪みがあったからその百メートルに圧力がかかったのだ、と考えるほうがリアルだ。そしてその半径一キロの圧迫は、もちろんさらにその周囲の半径百キロメートルの、一万キロメートルの、つまり世界が理不尽で歪んでいるからだと考えようじゃないか。
私は世界の変革をやはり求めたい。故人の冥福を祈り、その人の選択を受容し、肯定したい。そこからでないと、世界に向けた建設的な動きは生まれないからだ。そう考えるからだ。
この時期に、私はたまたま台本を書いていた。その上演は三月にある。私は、残された人たちの様子を書こうと思う。観察したこと、自分が考えたこと、そしてフィクションが織り交ざった創作になる。すごく書きにくい。だけど今考えたことを今書かないと、私はその人の死を乗り越えられないのかもしれない。(劇作家 公認心理師 鈴江俊郎)
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上品芸術演劇団 26年3月のツアーは
「秘密ひとつ。」作・演出 鈴江俊郎。
◇今治市 波方公民館(愛媛) 3月21日(土) 11時・15時 2ステージ
◇ウイングフィールド(大阪) 3月23日(月)19時半・24日(火) 19時半 2ステージ
二人芝居です。出演 鈴江俊郎と沖縄から城間里沙子さん。
今治公演――
波方公民館2階第2会議室
前売一般 2,000円、当日一般 2,200円、学生(中学生以上)500円
主催 みかんの会 TEL090-5134-8412 imabarisg@yahoo.co.jp
(後援:今治市・今治市教育委員会・今治市文化協会)
360度のお客様のなかでおこなうストレート・プレイです。
https://shibai-engine.net/prism/webform.php?d=tsh5tm2t
大阪公演――
ウイングフィールド
前売一般2,500円、当日一般3,000円、学生(中学生以上)1,000円
主催 上品芸術演劇団 put.put.on.airs0926@gmail.com
270度のお客様のなかでおこなうストレート・プレイです。
https://shibai-engine.net/prism/webform.php?d=oe38ff7i