
立石北口の再開発事業にからむ住民訴訟。
区が赤字穴埋めのために税金を不当に投入したと訴える我々に、一審判決は、我々の申し立てが監査請求の期間経過後だったとして、却下した。
つまり、「赤字穴埋めのために税金を不当に投入した」問題については、まったく審査されることがなかったのだ。
この判決に対する弁護団の説明会は、とても勉強になるものだった。
弁護団は、再開発法という法律そのものが違憲の可能性があるという。地主を巻きこんで組合をつくってしまえば、組合員だけで勝手になんでもできてしまう。再開発は地域全体の問題なのに、この法律のせいで、地主以外の住民が口を出せない作りになっている。
だから事業者側のやりたい放題。そして、全国の再開発で似たようなこと(事業の赤字に税金を使う)が横行してるけど、監査請求しても、自治体がやってることは「財務会計行為ではない」から「監査請求の対象にならない」と、退けられ続けているらしい。
葛飾区の場合も、「最高裁平成2年6月5日判決」やら「最高裁昭和51年3月30日判決」やらを持ちだして、「本件請求は・・・住民監査請求の要件を満たしていないと判断しました」と、監査委員が却下してきたため、裁判所に訴えたのだった。

ところが今回の判決は、区長の再開発組合の総会での議決権の行使、すなわち葛飾区に不利な議案に賛成したこと、反対しなかったこと、撤回しなかったことを「財産の管理を怠る事実」すなわち「財務会計行為」だと認めた。
しかしそのうえで、でも期限切れで・・・と却下したのだ。
首長の議決権行使が財務会計行為となれば、住民は監査請求をすることができる。弁護団は、この判決は再開発事業における住民の監査請求が可能だと認めた初の判決、「これは市民運動の前進である」と述べたのだった。
12月13日、私は東京で行われた、福島県浪江町津島地区の住民たちが闘っている「ふるさとを返せ津島原発訴訟」の集会に参加した。
原発事故、避難、放射能汚染、それらはもう過去のことみたいになりかけているけど、この津島地区はいまだ98%以上が帰還困難で、ほとんどの住民が帰れないままでいるのである。汚したら元に戻せという原状回復、つまりふるさとを返せ、という当たり前の訴えを1審判決が却下したため、原告団は目下控訴審を闘っている。
国の責任を否定した、2022年6月17日の最高裁判決以来、全国で起こされている原発事故に関する訴訟は、負けの連続。
しかし、負けの裁判でも、裁判には意味があることを、この集会で改めて思い知った。
今の日本の司法は全く公正でなく、国を勝たせることを目的に、または最高裁判決に合わせることを目的に、判決を出す。だけど国に理はないから、明らかに無理な理由をこじつけて、却下をする。それはたとえば、
「原発敷地内に大きな地震は来ないから」
「これを認めると国内の他の原発にも問題が及び司法権のやりすぎになるから」
「国民が選んだ自民党政権が決めたことなので仕方ない」・・・
簡単に言えばこんな理由だと、元裁判官の樋口英明氏*が述べ、会場内に苦笑が漏れた。
厚い厚い「司法=国」の癒着の壁。

でも住民側はこの壁を乗り越えるべく、新たな視点を模索し、丁寧に、慎重に、正確な証拠を積みあげていく。その結果、隠されていたいろんな事実が明るみになる。
2001年9月11日の同時多発テロを受け、アメリカ原子力規制委員会(NRC)は翌年、全米の原発に、B5Bと呼ばれる指示を出した。それは、どのような原因で全電源を失っても、テロや火災、いかなる出来事が起ころうとも、原発は原子炉を冷却し続け過酷事故を防ぐ対策を講じなければならない、とする命令だった。このB5Bについて、2006年に日本の原子力安全・保安院は、職員を派遣し、説明を受けていた。
にもかかわらず、この情報を握りつぶした。
B5Bに沿って日本でも対策を講じていれば、原発事故は起きなかったはずなのだ。
・・・この新たな争点は、明らかに「津波対策を命じていても事故は防げなかった」とする最高裁判決を乗り越えている。
判決で負けても、裁判で闘えば闘うだけ、住民側は敵のボロを暴きだしていくのである。
立石の裁判、住民側は控訴した。控訴審で、地裁が認めた財務会計行為の判断が覆されるリスクはあるという。それでも我々が進むことで、葛飾区のボロは、より多くの人たちに知られるようになるだろう。
そしていつか司法が、再開発における公の不正、その中身そのものと向き合わざるを得なくなる日がくるだろう。
*樋口英明氏は、2012年11月に関西電力を相手取り住民側が起こした、大飯原発3、4号機の運転差止を求める訴訟で裁判長を務め(福井地裁)、住民側の請求を認める判決を出した。樋口氏はこの訴訟を担当して初めて原発の危険性を知り、退官後も原発差止の必要性を訴える活動をしている。(岩波ブックレット1103、樋口英明『原発と司法』より)
—————————————————————————————————
塔島ひろみ<詩人・ミニコミ誌「車掌」編集長>
『ユリイカ』1984年度新鋭詩人。1987年ミニコミ「車掌」創刊。編集長として現在も発行を続ける。著書に『楽しい〔つづり方〕教室』(出版研)『鈴木の人』(洋泉社)など。東京大学大学院経済学研究科にて非常勤で事務職を務める。
…………………………………………………
新潟市美術館で来年1月24日(土)から3月22日(日)まで行われる「開館40周年記念 路傍小芸術」で「車掌」が展示されます。