「カナリア俳壇」129

はや小晦日となりました。この一年のご投句をありがとうございました。「カナリア俳壇」が皆さんの作句に少しでも役に立っていれば嬉しく思います。

〇薹立ちの牛蒡掘りたる鍬高し     作好
【評】「鍬高し」だと鍬が静止している感じを受けます。「薹立ちの牛蒡を掘るや鍬高く」でいかがでしょう。

△~〇おわんにも名を残しおり芋煮会     作好
【評】「おり」は「をり」と表記しましょう。名を残すとは名のある作家の椀ということでしょうか。この方面にはうといのですが、とりあえず「おわんにも作家の印や芋煮会」としてみました。

△~〇息白く陣取り遊びはしゃぐ顔     のり子
【評】「息白く」ですでに顔が見えていますので、最後に「はしゃ(や)ぐ顔」を持ってくるのはよくありません。場所を示して「路地裏の陣取り遊び息白く」とするのも一法ですね。

△~〇走り来て焼いも売りの声ひびく     のり子
【評】このままの形だと、焼いも売が走って来たようです。たぶんお客さんが走ってきたのでしょう。とすれば「声ひびく焼芋売へ走り来る」としたほうが正確かと思います。

〇今まさにターナー描く冬茜     瞳
【評】ターナーが描いたような美しい冬茜だったのですね。「描(えが)く」を「描(か)きし」と過去形にしたほうが分かりやすいと思います。「今まさにターナー描きし冬茜」。

〇古希までに叶ゑたき事日記買ふ     瞳
【評】大きな目標を立てておられるのですね。「叶ゑ」ではなく「叶へ」と表記しましょう。

〇~◎小半日お節料理の買い出しに     美春
【評】「小半日」から、ゆったりとした気分での買い物であることがうかがわれます。「買ひ」と表記しましょう。

◎角揃へ伸し餅分くる朝かな     美春
【評】しっかりとした写生句です。どこか厳かな朝が想像されます。

〇敬礼の微動だにせず雪催ひ     徒歩
【評】制服を着た人の戸外における訓練風景でしょうか。欲を言えばどんな職業の人かわかるといいのですが、峻厳な心構えが伝わってきます。

〇~◎褒むるのが上手きAI炬燵酒     徒歩
【評】この頃のAIは「褒めてくれ」と指示すると実にうまく褒めてくれるようですね。まさに現代の俳句。ほっこりとする季語も上々です。現代の句ですので、文語を使わない工夫をしてみてもいいかもしれません。たとえば「AIの励まし上手こたつ酒」など。

〇藍深き冬川の色渡舟行く     恵子
【評】美しい冬川の景が思い浮かびます。「藍深き」があれば「色」は省略できそうです。「藍深き冬川をゆく渡し舟」とすると、さらにゆとりのある句になります。

〇~◎守り継ぐ機屋の音や去年今年     恵子
【評】「去年今年」は午前零時前後をイメージさせますが、その時間には機屋も仕事をしていないと思いますので、「守り継ぐ機屋の音や年の内」くらいでどうでしょう。

〇夜明け前手繰り寄せたる毛布かな     白き花
【評】素直な詠み方で結構です。もう少し雅な感じを出すなら「しののめの手繰り寄せたる毛布かな」とするのも一法です。

〇脚長の濃き影連れし冴ゆる朝     白き花
【評】冬の脚長蜂を詠んだのですね。この句の形だと「冴ゆる朝」に力点がありますが、蜂のほうにスポットを当てたほうがいいかもしれません。「影冴ゆる脚長蜂や朝の庭」などもう一工夫してみてください。

◎笹鳴や木の間隠れに幼稚園     妙好
【評】しっかりとした写生句です。幼稚園からも子供たちの声が聞こえてきそうですね。

◎不意に来し永遠の別れや枯木星     妙好
【評】季語がいいですね。作者の気持ちが十分に伝わってくる詩情性豊かな句です。

〇~◎酒好きの友は多弁や猩猩木     永河
【評】猩猩木とはポインセチアのことですが、この句には確かに猩猩木のほうが合いますね。「友は」の「は」がやや強すぎる気がしますので、「友の」でいかがでしょう。

〇極月の踵(かかと)かさかさ泣いてゐる     永河
【評】「泣いてゐる」まで言ってしまうと俳句ではなく自由詩になります。「極月の踵かさかさ音立つる」と客観写生で踏みとどまるのが俳句ではないかとわたしは考えています。

◎銀杏散る藁葺屋根の長屋門     万亀子
【評】どっしりとして骨太の吟行句です。結構でしょう。

〇今庄の本陣跡や紅椿     万亀子
【評】句の形もしっかりとした作品です。焦点は「本陣跡」よりも「紅椿」に置きたいと思いますがいかがでしょう。その場合は「本陣跡に紅椿」となります。

◎幽天や母上にまた会はれしか     椛子
【評】「幽天」は冬の空模様のこと。良い季語を見つけられました。前書がなくても追悼句であることがわかります。

〇動かざる目高眠らす竜の玉     椛子
【評】「眠らす」は土に埋めたということでしょう。そのへんを即物的に詠んで「動かざる目高を土へ竜の玉」としたほうが素直に思います。土へ還した目高が竜に転生するというファンタジーを考えるのも一興です。

△~〇蟷螂枯るぺろぺろ舐める脚の露     智代
【評】「蟷螂枯る」と「露」の季重なりが気になります。「枯蟷螂脚の水玉舐めてをり」くらいでいかがでしょう。

〇枯れてなほメタセコイヤの華やげり     智代
【評】「なほ」というところに分別臭さや理屈を感じてしまいます。それを消すのがコツです。「枯れきつてメタセコイヤの華やげり」としてみました。

次回は1月20日(火)の掲載となります。前日19日(月)の18時までにご投句いただけると幸いです。皆さんどうか良いお年をお迎えください。河原地英武

「カナリア俳壇」への投句をお待ちしています。
アドレスは efude1005@yahoo.co.jp 投句の仕方についてはこちらをご参照ください。


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