
熊が町中をうろついている。
怖いのなんのって。日常生活もままならない地域もある。異常事態だ。死亡者数も過去最悪ということで、災害だとしか言いようがない。
中でも東北や北海道が断トツで、酒田は数件で済んでいるが、山間部の方では熊の目撃などはよくあることでニュースにならないだけだろう。調べたら案の定400件を超えていた。
内訳は人的被害が一件。駆除されたのが一件。捕獲して山に返したのが一件で、他は逃げて行方が不明ということだった。
それにしても、怪力無双の熊のことだ。追い払うことも出来ないし、「山で冬眠して」といくら言っても聞いてくれない。ここから山は見えるがかなりの距離がある。いったいどうやって道中気付かれずに市街地まで来たのだろうか。
熊が最上川を泳いでテトラポットに上がっているニュースを見たが、この時は朝6時前にパトカーが家の近くに来て「熊が出たので外出しないで下さい」と注意を呼び掛けていた。まさか町中に熊だなんて。万一出くわしたら、怖くてほんとに外へ出られない。
前述の人的被害はあってはならないが、山間の村落の人が畑に行く途中に襲われたということだった。ニュースでは顔を引っかかれたが命に別条はないと言っていて、あぁ良かったと聞き流すところだったが、顔の傷は一生残る大ケガだったに違いない。深刻な事態だ。生活圏での出来事でもあり、外へ出るなと言われても無理な話だ。
熊が里に下りて来るのは山のブナなどが大凶作で食べ物がないからと言われているが、それだけだろうか。森林を伐採して道路を造ったりメガソーラーを設置したりと、山の環境をぶち壊している人間にも問題があると思うが‥‥‥。農家では畑などの作物が食い荒らされる被害も多く、柵を張るなどのあの手この手と対策に苦慮している。しかし、何をしでかすか分からない熊には無駄な抵抗のようにも思える。
また、駆除した場合は「かわいそう」との抗議が殺到するのだという。それは動物愛護団体などが多いらしいが、気持ちは分かる。だが、人命が優先なのは子どもでも分かる。既に人を襲って多数の死者まで出ている。ここでは感情論は捨てるべきだ。ましてや町中で共生共存など出来るはずもなく論外、もっての外だ。親子での出没が多いのは、オスが子熊を食べるからとも言われている。このように凶暴なケダモノでしかないのだ。
勿論、警察のパトロール強化も重要で、これからはライフル銃を使用するそうだが、一方の猟友会も高齢化が進み限界がある。それにしても、殺人犯ならどこに逃げても逮捕されるのだから、熊もタイホしろよと言いたくなる。
こうなると、国を挙げての対応しかないだろう。熊の管轄は環境省となっているが、これを防衛省に移管してはどうか。そして、必要不可欠のものを配備する。まさかの戦車は無理だろうが、国のことだ。国民の知らない秘密兵器ぐらいはあるだろう。それなら目視では見えない隠れた熊でも一発で察知できる優れた性能であろうことは容易に察しがつく。
と、いくらマトモなことを言っても相手にしてもらえないことは百も承知だ。ならば、もっと現実的なことを提案する。
かつて日本には「マタギ」という生業があった。マタギとは熊猟師のことだ。それらの地域には熊は山の神からの授かりものだとするなどの神聖で厳格なしきたりがあったとされている。つまり、崇高な日本の伝統文化に他ならない。マタギは今でもあるのか。そのマタギを復活させるのだ。
何を言いたいのか。要するに熊を食用にするということだ。この度の熊の出没で熊鍋や熊の掌の話を耳にした。非常に美味で絶品ということだった。ということは日本のどこかで食べているのだろう。牛や豚、イノシシだって多くの人が食べている。どこも違わないはずだ。食べたくない人は食べなければいいだけのことだ。
熊は保護動物なのか害獣かは知らないが、もし捕獲が許されるのであればプロの猟師を総動員して山に入って狩りをしてもらうのだ。町中の熊は警察に任せればいい。いかがだろうか。
神を戴くのだから値段はつけるべきではない。罰が当たる。店頭に賽銭箱を置いてもらうのだ。そうすれば消費者にとってもこんなにありがたいことはない。これこそ一石二鳥ではないか。
尚、タイトルは「おはよう」にした。熊はいないが、ニワトリ、犬、猫、馬、ライオンなどが登場する楽しい曲だ。是非とも聞いてほしい。
いずれにしても、おれの発想も含めてこの異常事態が通常になることだけは何としてでも避けなければならない。
あぁ、一度でいいから熊鍋食いてぇ。
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斎藤典雄
山形県酒田市生まれ。高卒後、75年国鉄入社。新宿駅勤務。主に車掌として中央線を完全制覇。母親認知症患いJR退職。酒田へ戻り、漁師の手伝いをしながら現在に至る。著書に『車掌だけが知っているJRの秘密』(1999、アストラ)『車掌に裁かれるJR::事故続発の原因と背景を現役車掌がえぐる』(2006、アストラ)など。