
足腰の弱った高齢の親を見ていると、行政サービスの足りなさを痛感する。
ベンチがない。
途中に休む場所がないから、なんとか歩ける距離の場所にも、行くことをためらう。
タクシー代。
そんなわけでちょっとした外出もタクシーに頼る。そのタクシー代の高いこと!
といって外出を控えると、今度はそれだけ体力も落ちる。
区は災害時に優先して助ける対象を1人暮らしで寝たきりの人などに絞り、自助・共助をさかんに呼び掛けるけど、こんな両親を抱えて、水害や大地震がおこったとき、避難所まで逃げることは到底できない。
予算をかけさえすれば、できることがもっといろいろある気がする。そこに税金を投じれば、弱者がもう少し安心して楽に暮らせる町になるのになと思う。
2023年1月の広報で、葛飾区は区役所の移転を発表した。新庁舎は、立石駅北口の再開発ビルの一つに入る。その整備費用の総額は「約282.3億円となりました」と、広報にはいともあっさり書かれていた。

その立石駅北口地区の再開発は昨年9月着工した。このコラムで以前紹介した呑んべ横丁も、赤線地帯だったくねくねした路地も、早い時間から客で溢れていたもつ焼屋さんも、今はもうどれも存在しない。
そして今年5月の「広報かつしか」。
「新庁舎の整備費用は、現時点で次のとおり見込んでいます。
令和4年12月時点 約282.3億円 → 令和7年2月時点 約357.9億円」
なんのお詫びもなく、区民への事前伺いもなく、たった2年と少しで70.6億円も高くなった。なんていいかげんなんだろう。とすると、この357.9億円という数字だって、まったく信じられるものではない。
区庁舎が移転して新しくなっても、両親の生活は楽にならない。「駅前に移転することで来庁しやすくより便利に」と広報は書くが、京成立石は区の南部を東西に走る京成押上線上にあり、ここと一本でつながる区内の駅は四つ木と青砥と高砂だけ。そのうち青砥は今そばに庁舎があるのが逆に遠くなる。そして大体「駅前が便利」という発想は、偏った、日々電車で通勤する「働ける人」目線の発想だ。

区民の払った税金が、湯水のように再開発と一体化した区庁舎移転に投じられる。もうかるのはこの工事の事業者たち。鹿島、三井住友、東京建物、旭化成・・・・、葛飾区のお金がこの工事に関わる、こういう大企業たちに流れていく。
去年、2024年の4月、我々区民はこの嘘っぱちの庁舎移転を問題として、訴訟を起こした。
事業費が赤字にならず事業者たちがきちんともうけを出せるように、数字をごまかして区の支払い分を異様に高く決めていたのだ。
ちゃんと計算したら7億1610万円もごまかされていたことがわかった(*)。これを見抜いてくれた人は、本当に偉い!

青木区長に同額の請求を求める訴訟。原告の数237名。私も、何も役に立たないけどその一人に加わらせてもらい、傍聴に足を運んでいる。
そして去る9月19日、東京地裁で判決が言い渡された。
結果は次回に。お楽しみに!
(つづく)
*区庁舎が入るビルは、1、2階はお店とかで、3階以上が区庁舎となる。
区は4階以上の床を買い取り、3階部分は、区がもともともっていた土地・建物との「権利変換」によって取得することになるのだけど、その際、一般の商業ビルでは1、2階の値段は3階より高いのが普通なのに、3階の床の評価額を2階の2倍以上(!)にして計算していたのだ。興味がある方は私たちが提出した岩見良太郎埼玉大学名誉教授の「意見書」をぜひ見てほしい。事業の嘘とその理由を喝破し、「本件市街地再開発事業における資産評価は、著しく適正さを欠き、そのことによって、区民に多大の損失を与えることになる」と断じている。
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