9月18日に「防衛装備庁の研究補助金に大学からの応募大幅増 – カナリア倶楽部」という記事を書きましたが、学内で軍事研究が行われることを容認する大学が増える中、「学術会議の政府からの独立貫徹を希求する信州市民の会(略称:信州市民の会)」は、県内に18ある大学・短大に対して「軍事研究を大学に持ち込まないことに関する要望書」を提出しました。
軍学共同反対連絡会も「それでも応募しますか?―安全保障技術研究推進制度2025年度応募状況と採択結果について―」を発出しました(PDFファイルです)。
防衛省などの軍事部門からの研究補助金による研究は軍事機密なので、成果の公表が制限されたり、研究に参加できる人の制限が行われるリスクが高いことことを、カナリア倶楽部の記事でも指摘してきました。同様の指摘は日本学術会議が2017年に出した声明でもなされています。
ただ現時点では、成果公表や研究参加者の制限は行われておらず、防衛省関係者による介入があったという声も上がってはいません。そのため無邪気に「民生活用もできるなら良いじゃないか~」と主張している研究者が少なくありません。そんな無邪気なことでは危ないという指摘は、その通りだと思います。
6月11日に日本学術会議法の変更が成立してしまいました。そしてその翌日には「防衛科学技術委員会(DSTB)」が正式に発足し、その翌日には第1回会合が行われています。驚くべきほどのこの手際の良さは、いったい何なのだろうか?と思います。そういえば9月の自民党総裁選挙の所見発表演説会では、候補者の一人で、日本学術会議「改革」の特命大臣でもあった小林鷹之氏が「(自分は)あの日本学術会議を説得して、軍民両用技術の容認へと梶を切られる(ママ)こと」になったと自らの手柄をアピールしていました。
そしていよいよ、新たな学術会議の選考委員が決まったとのことです。
大学界はこのまま軍事研究推進路線に引きずり込まれていくのかどうか、市民の皆さんの監視が必要だと思います。
——-
西垣順子<大阪公立大学 高等教育研究開発センター>
滋賀県蒲生郡日野町生まれ、京都で学生時代を過ごす。今は大阪で暮らしているが自宅は日野にあり、いずれ帰る日のための準備を模索中。老若男女、多様な背景をもつ人たちが、互いに互いのことを知っていきながら笑ったり泣いたり、時には怒ったりして、いろんなことを一緒に学びたいと思っている。「地域がつくる子どもの居場所(サードプレイス):不登校になっても孤立しないまちづくり」(晃洋書房)、「学生と考えたい『青年の発達保障』と大学評価」(晃洋書房)(いずれも共編著)など。