「カナリア俳壇」124

昨日は敬老の日でした。祝ってもらった方もおられることでしょう。本来ならこの日には秋らしくなっていてほしいのですが、相変わらずの暑さ続きです。ご自愛ください。

△~〇羽光る夕陽に群舞秋茜     作好
【評】句意はよくわかりますが、言葉の配列がややごたついている感じです。とりあえず「秋茜舞ふや夕日を翅に受け」としておきます。

△~〇脳天の回転鈍し暑き秋     作好
【評】「脳天」ではなく「頭」の回転が鈍くなると言うのでは?「秋暑しわが脳天は干涸びて」としてみました。

〇エジプトの古代語るや秋の展     美春
【評】「古代語る」と事柄を述べるのでなく、具体的な物を持ってきた方が読み手にとっては臨場感が出ます。「エジプトの黄金の棺秋の展」など。

〇~◎美術展モネ睡蓮に光差す     美春
【評】「美術展」が秋の季語ですね。しっかりと写生された句です。「モネの睡蓮」と言いたいところです。「美術展モネの睡蓮光りをり」としてみました。

△~〇紅玉の月を指輪に見立てたり     瞳
【評】このままでは月蝕であることが分かりづらいので、季語になるかどうか微妙なところではありますが、月蝕と明示してしまいましょう。「紅玉の指輪今宵の月蝕は」と考えてみました。

〇~◎苔庭に囁くやうに秋蚊来る     瞳
【評】秋の蚊の感じがよく出ています。「苔庭へ」でどうでしょう。

△~〇羽持つて児が手のひらに秋あかね     チヅ
【評】「羽」と「秋あかね」はワンセットですので、できるだけ近づけてください。「児の指のつまむ片翅秋あかね」としてみました。

◎朝顔やバルコニーから手を振る児     チヅ
【評】句の形もよく、情景もありありと見えてくる佳句です。出勤するお父さんを見送っている場面かもしれませんね。

〇サバサバと枯れし朴葉の落つる夜     白き花
【評】「サバサバ」というオノマトペがユニークです。切れ字を使い、「サバサバと朴の枯葉の落ちにけり」「サバサバと朴の枯葉の散る夜かな」と考えてみました。

〇野葡萄や選りすぐりたる星の色     白き花
【評】中七下五も野葡萄のことですので、上五を「や」で切ってはいけません。「野葡萄は選りすぐりたる星の色」とします。

◎ジャズの音にひとり更けゆく白露かな     徒歩
【評】現代人の心情を「白露」という古典的な季語とマッチさせた秀吟ですね。こんなふうに季語と事物をどれだけ離せるかが俳句創作の醍醐味だと思いました。むろん詩情をもたせながら。

〇~◎ジオラマの将校若し虫の声     徒歩
【評】歴史の展示館での景でしょうか。箱庭のようなところに置かれた兵隊人形の顔はけっこう童顔ですよね。季語に哀愁を感じます。室内の展示館だと虫の声は聞こえないので、「虫の秋」くらいでもいいかなと思いました。

△~〇九月来る廊下を走るタブレット     妙好
【評】学校の廊下を、生徒がタブレットをもって走っているのでしょうか。ちょっと省略のし過ぎですね。「タブレット小脇に廊を休暇明」としてみました。

〇鯔飛べり棒高跳びの弧を描き     妙好
【評】果たしてこの比喩が読者の共感を得るかどうかはわかりませんが、ユニークな感性の句であることは間違いありません。

〇頂きし野菜の菜虫よく太り     恵子
【評】どこかユーモラスな句。この形ですと菜虫をもらったようにも読めるので、「野菜に」としたほうがいいかもしれません。

◎露草のここも売地や機屋跡     恵子
【評】かつては機屋だった場所も今は露草が生い茂る売地になっているのですね。いずれはマンションでも建つのでしょうか。露草がさびしい気持ちをよく伝えています。

〇破れ巣にくねる蜂の仔クリーミー     智代
【評】ユニークな句です。信州育ちのわたしは「クリーミー」に共感します。小さいころ、物干し竿で足長バチの巣を落として、蜂を追い払ってから巣の中の幼虫を指で引っ張り出して食べたものです。近所の大人もそうしていました。

〇雨音にひとり寝返りわが秋思     智代
【評】雰囲気のある句です。「ひとり」で作者の姿が思い浮かびますので、下五の「わが」は要らないように思います。「雨音にひとり寝返る秋思かな」くらいでどうでしょう。あるいは「寝返りて雨音ちかき秋思かな」とするのも一法でしょうか。

〇~◎名月や手すりに座る猫親子     万亀子
【評】静かで風情のある景色ですね。「猫親子」は春の季語になってしまうため、「猫二匹」とするのも一案です。

◎挨拶を交はす木道水の秋     万亀子
【評】秋らしい爽やかな句です。知らない人同士が挨拶を交わすのも素敵です。

◎うらがへる蟬の静けさ掌にのせる     永河
【評】たんたんと詠んでしみじみとした情感が伝わってくる詩情豊かな作品です。

〇~◎肩触るる人恋しさや萩の花     永河
【評】こちらの句もいい感じです。「恋しさ」まで言うとかなり短歌寄りの句になりますが、もう少し抑制するなら「肩触るることのうれしさ萩の花」「ふと肩の触れしをみなよ萩の花」でしょうか。でも短歌的な俳句も大いにけっこうですよ。

△~〇桃浸けて的屋の待てり地蔵川     夏子
【評】下五が例えば「宿場町」など地名ならこの形で問題ありませんが、「地蔵川」はたぶん桃を浸けてある川でしょうから、桃と地蔵川は離れさせてはいけません。「川に桃浸けて的屋が客待てり」でしょうか。前書に「醒井宿」とでも書いておきましょう。

〇梅花藻のうへに零せり百日紅     夏子
【評】何を零したのか書きたいですね。「梅花藻へ花を零せり百日紅」「梅花藻へ落花しきりや百日紅」などもう一工夫してみてください。

次回は10月7日(火)の掲載となります。前日6日の午後6時までにご投句いただけると幸いです。河原地英武

「カナリア俳壇」への投句をお待ちしています。
アドレスは efude1005@yahoo.co.jp 投句の仕方についてはこちらをご参照ください。


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