カナリア朗読劇場「日本国憲法」第5シリーズの最後は、第10章「最高法規」から基本的人権の由来特質を謳った第97条、第3章「国民の権利及び義務」から自由及び権利の保持義務を謳った第12条第1文、前文第4項をお届けします。1回に複数の条文を朗読する時はどの条文かをタイトルとして紹介した後、それぞれの条文の前にサブタイトル的に再度紹介しているのですが、今回はサブタイトルをなくして一つにつなげた方が日本国憲法が保障する人権がどういうものか、どうしてこの3つが選ばれたのかがよくわかるのではないかと思い、一文化した別バージョンも作成しました。最後に添えていますので、是非2つのバージョンを聴き比べてみて下さい。解説は京都法律事務所 弁護士の小笠原伸児さん、朗読はフリーアナウンサーの塩見祐子さん、イラストはかしわぎまきこさん、動画の再生時間は1分28秒、別バージョンは1分14秒です。
日本国憲法が豊富な人権の保障規定をおいていることは1回目にお話ししました。その人権って、人類が長年にわたって獲得するために努力してきた成果であり賜物だということを第97条は明記しています。また、これまでに様々な試練を何度も乗り越えて、ようやく侵すことのできない永久の権利として認められるようになったということも第97条は規定しています。自由権とか平等権とか、今では人が生まれながらにして有している権利だという理解が浸透していますが、初めからそうだったわけではないのです。人権保障を掲げる憲法のもとで今を生きる私たちは、かつての人類の努力に対して感謝しなければなりませんね。
そして、第12条は、そうした人類の努力の成果という性格を有する人権が脅かされ、後退させられることのないように、現代の私たち自身が、かつての人類と同じように、常に努力をしないとダメですよと規定しています。
一人ひとりが自由に、豊かに、自分らしく生きていける社会が第13条のめざす社会だということを1回目にお話ししました。また、この国の政治の主人公は主権者である私たちですと3回目にお話ししました。憲法のめざす社会を実現するのが政治の役割ですから、憲法は、私たちに期待しているのです。
この憲法は、豊かな人権を保障する憲法であると同時に、二度と戦争をしない、戦争をさせない絶対的平和主義の憲法でもあります。今回のシリーズでは、平和主義のことに触れませんでしたが、人類史に残る高らかな理想と目的を掲げた平和憲法であることに間違いはありません。その観点から、前文4項で、私たちは、この国の名誉にかけて全力で崇高な理想と目的を達成することを世界の人々に誓いました。
この国の未来は、私たち自身の手で、私たち自身の行動で、豊かなものにしていくことを憲法から期待されているということを、最後にお話しさせていただきました。