カナリア朗読劇場「日本国憲法」の第5弾第3回は、第3章「国民の権利と義務」から第16条をお届けします。憲法には様々な国民の権利が記されています。与えられた権利を行使しないと、権力者は「使わないなら、なくても良いだろう」と思うかも知れません。第16条にはどんなことが書かれているか確認しておきましょう。解説は京都法律事務所 弁護士の小笠原伸児さん、朗読はフリーアナウンサーの塩見祐子さん、イラストはかしわぎまきこさん、動画の再生時間は40秒です。
日本国憲法は国民主権原理を採用しており、この国の政治のあり方を最終的に決定する力または権威は国民にあります。つまり、政治の主人公は国民なのです。
もっとも、全ての国民が参加して政治のあり方を決定することはできませんので、主権者国民が選挙権を行使することにより代表を選出して、国会議員らの国民代表が政治的意思決定をなし、政治のあり方を決めています。
だからといって、皆さん、国民が政治の主人公であることを建前だけにしてしまうのは、憲法の基本原理にそぐわないのではないでしょうか。
今回、取り上げる請願権(第16条)は、参政権と同じ機能を営む憲法上の権利として位置づけられるものであり、主権者である私たちが民主政治の原理の徹底のために活かしていきたい権利です。
請願とは、一般的には、国または地方公共団体の機関に対して、その職務に関する事項について希望を述べることと理解されています。近代議会制が成立する前は為政者に要望を伝える唯一の手段として、成立した後も選挙権が制限されていたために民意を伝える重要な手段として、積極的な意義がありました。それが、表現の自由が保障され、国民主権原理の下で参政権が確立された現代憲法のもとで、請願権の役割は薄れたと言われました。
しかし、民主政治の実現のために活用され得る権利は、国民主権原理にとって積極的に評価され、活かされてしかるべきだと思います。
特に強調したいのは、憲法自身が、私たち主権者一人ひとりに対して憲法を活かすように訴えている(前文1項、4項、第12条)もと、例えば署名活動の結果を集めた署名簿を官公署に提出することは請願権の行使であり、誰もが手軽に行うことのできる憲法規範の実践行動ではないでしょうか。
※次回は6月15日(日)に第31条を公開予定です。