通学定期について考える

高校には全日制、定時制、通信制の3種類があります。近年、通信制高校を選択する生徒が増えており、11名に1名は通信制高校に通っていると言われます。中学校の1クラスが35人程度とすると、3人くらいは通信制高校に行っているわけです。
通信制高校の生徒は、学校に出向かないといけない日もあるのですが、基本は通信で教育を受けることができます。ただ現実的には、10歳代半ばの子ども達が通信だけで学ぶことは難しいです。そこで、日常的に学校に通って指導を受ける場合が少なくありません。とはいえ、通信制高校は全日制高校等と比べて生徒の住所が広域にわたるため、学校まで行くことが容易ではないことも多いです。そこで、各地にサポート校と呼ばれる施設があり、生徒たちはそこに通っています。サポート校にもいくつか種類があるのですが、その説明は割愛します。
このサポート校への通学に対して、通学定期の使用を認めないという方針を、JR東日本が発表しました。当事者や学校からの猛反発を受け、また政府からも当該方針の撤回のお願いがあったようで、最終的に撤回されました。


この経緯について、評論家の荻上チキさんがX(旧Twitter)で解説していました(確か、ご親族の中にサポート校を利用している方がおられたのではないかと記憶しています)。長い解説なので、ご関心のある方はこちらをクリックしてください。

まとめると、(1)通信制高校およびサポート校等の関連施設の増加を受けて文部科学省が、施設の種類の分類・整理を行った。(2)ただしそれは、「特定の施設の利用を通学と認める/認めない」という趣旨のものでは全くなかった(JR東日本の対応には政府も驚いた)。(3)今回、引き続き通学定期が使えるようになって良かった、ということです。
通学定期の利用可能性という問題は、学校に行きづらい子ども達がフリースクールに通う際などにも問題になっています。文科省は過去に、学校が「出席」と認定しているフリースクールへの通学には通学定期が使えるように学校として協力する旨の通知を出しています。とはいえ、最終判断は鉄道会社がすることになるため、難しいこともあるようです。
少し視野を広げてみると、通学定期という形で、生徒や学生が安価で交通機関を利用できるのは、日本では鉄道会社の負担(善意)による制度になっています。公費で負担するのではなく、民間の会社に丸投げ手しているのは日本くらいなものだというのが、関西大学の宇都宮教授の見解です。


人口減少等で鉄道会社の経営も厳しいのが現状です。他方で、公共交通機関は私たちの暮らしになくてはならないものですし、命にかかわるものですらあります。通学定期の負担のことも含めて、公共交通機関を持続可能な形で社会で支える仕組みを考える必要があると思いました。
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西垣順子<大阪公立大学 高等教育研究開発センター>
滋賀県蒲生郡日野町生まれ、京都で学生時代を過ごす。今は大阪で暮らしているが自宅は日野にある。いずれはそこで「(寺じゃないけど)てらこや」をやろうと模索中。老若男女、多様な背景をもつ人たちが、互いに互いのことを知っていきながら笑ったり泣いたり、時には怒ったりして、いろんなことを一緒に学びたいと思っている。著書に「学生と考えたい『青年の発達保障』と大学評価(晃洋書房)」(編著)など。


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