まだ肌寒いものの、あちこちで桜が咲き始めました。わたしの勤務先も入学式や新入生オリエンテーションなど行事が目白押しです。万物がいっせいに動き始めた感じです。
〇山の畑整いたる夜春の雨 作好
【評】上五、下五がともに名詞というのはあまり望ましい形ではありません(もたついた感じがしますので)。「山畑の整ひたる夜春の雨」でいかがでしょう。
△~〇残雪のあおきの葉っぱ獣あと 作好
【評】ちょっと句意をつかみかねますが、とりあえず「雪残る青木の葉つぱ獣道」としておきます。
〇手をつなぎ老夫婦行く涅槃会へ 瞳
【評】しみじみとした情感をたたえた句です。「涅槃会や手をつなぎゆく老夫婦」と切れを入れる手もありそうです。
〇楤の芽の天ぷら二つ甘苦し 瞳
【評】「天ぷら二つ」に何か意味がありそうですが、とりあえず素直な作でけっこです。
〇長閑さや猫の欠伸に誘はれて 美春
【評】「誘はれて」だと誘われて〇〇をしたともう一語必要です。もっとストレートに「長閑さや猫に欠伸をうつさるる」と言ってしまったほうがいいように思います。
〇薄氷張る大鉢に影よぎる 美春
【評】おおむね結構ですが、何の影か気になるところです。「薄氷はる大鉢に鳥の影」あるいは「大鉢に張る薄氷鳥よぎる」など、もう一工夫してみてください。
◎春あした独居気遣ふ子にメール 妙好
【評】季語の明るさがいいですね。情の深い、素直に詠まれた日常吟です。
◎池の面のきみもひとりか残り鴨 妙好
【評】哀愁を感じさせる句です。口語調も効果的です。
〇~◎朧夜に浮かぶ人影やはらかし 白き花
【評】「やはらかし」でいいのかどうか迷うところですが、朧夜の雰囲気がよく出ています。
〇クレソンや小川の岸を覆ふなり 白き花
【評】この句形ですと、本来は主語述語の関係で「クレソンが小川の岸を覆ふなり」としなくてはなりません。「や」で切るなら、下五は述語でなく、たとえば「クレソンや小川の岸を一面に」としたいところです。
△~〇下萌えの風に運ばれホームラン 恵子
【評】「下萌え」だと地べたに目がゆきますが、ホームランボールは空高々とあがります。季語も空とうまく続くようなものを選ぶといいと思います。「蔦の芽の」など。
〇朧夜や句作の助詞の定まらず 恵子
【評】俳句のなかで俳句を話題にするのは楽屋話みたいであまり望ましくはないものの、この句は季語がうまくマッチしていますね。
〇パソコンに点る風景朧の夜 徒歩
【評】風景が「点る」でいいのかどうか。またこの季語は戸外を連想させますが、これは室内の句ですね。しかし実験精神に富んだ句で、わたしも「パソコンに映る砂漠や月おぼろ」と考えてみました。
〇仏具屋の奥の暗がり春の雨 徒歩
【評】きちんとできた写生句ですが、なんとなく全体が予定調和的に思われます。いっそ「仏具屋の奥の金襴春の雨」くらいにするとゴージャスになりそうです。
〇和紙の里水は豊かに初燕 永河
【評】上五、下五がともに名詞になる形は句がもたついた感じになり、また三段切れのようにも読めますので避けましょう。「燕来る水豊かなる和紙の里」など。
〇菜の花や話し合ふ人和やかに 永河
【評】話し合っているのが誰なのか、見えてきませんでした。「菜の花やひそひそ声の少女たち」など、もう一つ具体性をもたせてほしいと思います。
◎魔鏡にて映すみほとけ春障子 万亀子
【評】春障子に映したのですね。ちょっと不気味でご利益のありそうな、不思議な味わいの句です。
〇道化師に帰る道問ふ涅槃寺 万亀子
【評】なぜ涅槃寺に道化師がいたのか謎ですが、面白みのある句です。「道化師に尋ぬる帰路や涅槃寺」と切れを入れるのも一法でしょうか。
〇口の端に香り残れり桜もち 智代
【評】常識の範囲内の内容で、ハッとさせる感動は弱いように思いますが、素直に実感を詠んだ句でとりあえず結構でしょう。
〇春雨にうるふ大地の息遣ひ 智代
【評】春雨といえば、大地を潤し芽吹きを促す雨のことですので、季語の説明どまりと思いますが、「大地の息遣ひ」と言ったところが工夫でしょうか。
◎春雷に児ら走りゆく畦の道 久美
【評】郷愁を感じさせる句です。情景もありありと見えてきました。
△~〇伊吹嶺を開きチヨコ食ぶスキー場 久美
【評】「チョコ」は片仮名ですので「ヨ」は小さく書いてください。いきなり伊吹嶺では、山を連想させますので、「スキー場チョコ食べながら俳誌読む」くらいでどうでしょう。
次回は4月22日の掲載となります。前日21日(月)の午後6時までにご投句いただければ幸いです。河原地英武
「カナリア俳壇」への投句をお待ちしています。
アドレスは efude1005@yahoo.co.jp 投句の仕方についてはこちらをご参照ください。