日本学術会議に関する記事を、今年に入ってからも2回書いていますが、日本学術会議法案が3月7日金曜日に閣議決定され、衆議院に提出されました。法案の全文は、内閣府のサイトに掲載されています。
率直に言って、非常に酷い法案です。これが通ってしまえば、日本は本来の意味でのナショナル・アカデミーを失います。
日本学術会議の光石会長は、今年に入って何度か会長談話を出しています。「概要」以上の情報が提示されない中、「概要」に対する懸念の表明に加えて、法案全文を早期に示すように求めていました。しかしどうやら閣議決定に至るまで、法案は学術会議に提示されていなかったと思われます。法案全文が示され、それを十分に検討した上でなければ、学術会議としては明確な意思表示をすることが難しいです。それは学術会議の協力団体である各学協会も同様です。おそらく政府はそのことを見越して、ギリギリまで法案を開示しなかったのではないかと推測します。
13日木曜日には、廃案を求める院内集会が開かれました(動画を見ることができます)。新聞記者の方が、任命拒否問題の時と比べて学協会から声が上がっていないのはなぜかという質問をする場面があります。広渡先生が回答している通り、政府が法案を開示しないという不誠実な態度をとり続けたことが、その原因です。
閣議決定された法案の問題点はいくつもありますが、今回は日本学術会議評価委員会の新設について書きます。これは内閣府に設置される委員会で、委員は日本学術会議会員以外から首相が任命します。選考方法の詳細は規定がなく、政令で定めるとのことです。つまり、「時の政権が委員を選べる」ということです。そしてこの評価委員会には、日本学術会議が策定する中期計画に意見を述べる権限と日本学術会議が行う自己点検評価に対して意見を述べる権限があり、これらの意見を活動に反映させる義務を日本学術会議は負います。
政府の説明では「自己点検評価の実施」という言葉が使われるのですが、これは自己点検ではありません。政権が任命する委員会による外部評価であり、介入です。
次回以降の記事で、他の問題点についても取り上げたいと思います。
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