学問の自由の砦がさらに壊されるかもしれない

引っ越しをしていた関係で、1回休みをさせていただきました。
日本学術会議の体制等を根本的に変更すると言われている法案が、今国会で審議される見込みです。政府の中の組織である学術会議を、法人化するという案です。「法人化する」というと、政府から独立するようなイメージを持たれるかもしれませんが、実際はその逆です。かつて国立大学は文部科学省の中の一組織に位置付けられていましたが、各大学はそれぞれが人事権を持っていました。2006年に法人化されて以降、自律性が徐々に削られていき、一昨年末には「文部科学大臣の承認を得た委員」が務める運営方針会議が、最高意思決定機関になるに至っています。学術会議の法人化案の詳細はまだ明らかになっていませんが、少しずつ情報が出てきています。


政府としては、日本学術会議との協議はしないという方針のようです。他方で日本学術会議側も複雑な立場にあります。
菅元総理が会員の任命拒否をし、その後に学術会議の体制を無理やりに変更しようとしてきたときには、梶田会長のもとでほぼ一丸となって抵抗をしめしていました。他方で政府との「対話」が長くなる中で、「いつまでもこんなことをしていたくない。本来の仕事に専念したい」という思いを強くする人々も増えてきているようです。隠岐さや香さんのSNSには、学術会議の困難な状況が示されているように思います。


ただ、政府が出してくる法案を受け入れてしまって良いわけではないと思います。日本学術会議への予算を減らし、本来業務以外の点検評価業務等を課すことで、日本学術会議が行うべき「人々の幸福のための学術」を推進するための活動が財政的にも労力的にも困難になり、その結果として日本で研究する人々の研究者としての成長や多様で幅広い学問の進展が妨げられるる恐れがありそうです。
TBSラジオの「荻上チキ Session」で、この問題の現状が詳しく取り上げられていました。音声を聞くことができます。


日本学術会議が、本来の役割を果たし続けるために、政府の法案に抵抗するためには、世論の後押しが重要になります。「みんなが理解してくれている」と思えば、頑張ることができます。信濃毎日新聞の社説、重要なことを書いていると思います。


例えば、このような提言を学術的に裏付ける知見を発信し続ける組織であるために、これから国会で審議されるであろう日本学術会議法の変更に関する審議に注目をしてください。


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西垣順子<大阪公立大学 高等教育研究開発センター>
滋賀県蒲生郡日野町生まれ、京都で学生時代を過ごす。今は大阪で暮らしているが自宅は日野にある。いずれはそこで「(寺じゃないけど)てらこや」をやろうと模索中。老若男女、多様な背景をもつ人たちが、互いに互いのことを知っていきながら笑ったり泣いたり、時には怒ったりして、いろんなことを一緒に学びたいと思っている。著書に「学生と考えたい『青年の発達保障』と大学評価(晃洋書房)」(編著)など。


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