後ればせながら、新年おめでとうございます。
今年も「カナリア俳壇」が皆さんの句作の一助になることを願っております。
皆さんの意欲作をお待ちしております。
△~〇大詩人言葉を連れて冬銀河 作好
【評】「谷川俊太郎氏逝く」などの前書きがあれば、追悼句として受け止めることができますが、このままですと大げさな表現の割に内容空疎になってしまいます。
〇茶の花を伐れば渋茶の香りする 作好
【評】実感をすなおに詠んだ句で結構です。渋茶の香りというのがおもしろい。
〇丘の上犬共に待つ初日かな 美春
【評】情景のよく見えてくる句です。中七がやや窮屈な感じですので「犬と待ちたる」でいいかもしれません。
△侘助や辻󠄀の地蔵を終とせり 美春
【評】「終とせり」が解釈できませんでした。上五は「や」で切れていますので、侘助のことではなさそうです。とりあえず「侘助や辻の地蔵に白きべべ」としておきます。
〇香煙の窯に香足す初詣 徒歩
【評】境内にある大きな香炉は「常香炉」と呼ぶようですが、それを「窯」と書いたのは、何かいわれがあるのでしょうか。とすれば、前書きがあるといいかもしれません。
△~〇人日や一際たかく鴉鳴く 徒歩
【評】句形はしっかりしていますが、この季語と鴉がひと際高く鳴いたこととの関係性がよくわかりませんでした。
〇川縁で歌口ずさむ息白し 白き花
【評】寒いのでしょうが、作者の心は明るく浮き立っているようです。下五、「息白く」でどうでしょう。
〇悴んだ指をぬる湯に泳がせり 白き花
【評】すなおな日常句です。下五が文語ですので、上五も「悴める」と文語に合わせましょう。
〇~◎湯気立つる南部鉄瓶師の書斎 妙好
【評】夏目漱石先生のような、と言っては古すぎですが、古風な老教授の風貌姿勢が髣髴としてきます。
△~〇初買の伊勢と産土守り札 妙好
【評】守り札は伊勢と産土の両方のものでしょうか。そのへんをはっきりさせ、「産土と伊勢のお札を初買に」としてみました。
〇淑気満つ山の神社に深き拝 万亀子
【評】敬虔な気持ちが伝わってきます。神社ですから淑気が満ちているのは当然ですので、上五を「初晴や」などもっと別の季語にするといいかもしれません。
〇初御空池面横切る鳥の影 万亀子
【評】漢字が7つも続くと句が暗っぽくなります。途中に平仮名を入れたいところです。とりあえず上五を「初空や」としておきます。
◎乙巳の初日ゆらめく長良川 永河
【評】十干干支によれば今年は「乙巳(きのとみ)」とか。おおらかな調べで、長良川が巳年の「巳」を思わせ、まことにめでたい句です。
〇~◎新春の光り駆けゆく襷たち 永河
【評】箱根駅伝ですね。走者を「襷たち」と言って大丈夫かどうか、多少迷うところですが、鮮烈な句です。
◎首伸ばし長き鶏鳴初社 恵子
【評】上五の具体描写がいいですね。新春のめでたさが伝わってきます。
△~〇裏参道日にきらきらと冬紅葉 恵子
【評】上五と下五が名詞の場合、中七の「日にきらきらと」がどちらにかかるか曖昧になります。つまり、「日にきらきらと」しているのは裏参道なのか、冬紅葉なのか……。たぶん両方なのでしょう。とりあえず「日を弾く裏参道の冬紅葉」としておきます。
〇~◎電波時計ふいに回れり霜の夜 智代
【評】ユニークな取合せの句です。厳密には電波時計の針が回るのですね。また、俳句では「夜」は原則「よ」と読みます。「針廻る電波時計や霜の夜半」としてみました。
◎ふうはりとテッシュで摘む冬の蠅 智代
【評】たしかに動きの緩慢な冬の蠅ならつまめそうですね。まるで蠅をいたわりながらつまんでいるようでユーモラスです。
△銀杏散る風音さみし夕日かな 欅坂
【評】「銀杏」「風音」「夕日」と句材が多すぎです。また、俳句では「さみし」のような主観を述べてはいけません。とりあえず「風に散る銀杏の並木夕日なか」としてみました。
〇ベルギーより帰国せし子等落葉踏み 欅坂
【評】ベルギーと落葉が何となく響き合っていますね。下五を「落葉踏む」と終止形にしましょう。
△~〇年玉を貰い(ひ)て披露細マッチョ 利佳子
【評】何を披露したのでしょう。上半身裸になって筋肉を見せてくれたのでしょうか。「腹筋を見せくれし子へお年玉」としておきます。
〇過去問を時折開き歌留多取り 利佳子
【評】「時折開き」とは、歌留多をしている最中でしょうか。そんな器用なことができるのですね。わかりやすく「過去問を畳に伏せて歌留多取」くらいでどうでしょう。
◎悴む手さすり墓前の灯をともす 瞳
【評】情景がよく見えますし、しみじみとした詩情が伝わってきます。
〇~◎産土や似た顔並ぶ初写真 瞳
【評】正月らしいほがらかな句。「似た顔並ぶ」におかしみが感じられます。
次回は1月28日の掲載となります。前日27日(月)の午後6時までにご投句いただけると幸いです。河原地英武
「カナリア俳壇」への投句をお待ちしています。
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