今回が年内最後の「カナリア俳壇」となります。この1年間、意欲的に投句してくださった皆さんに深く感謝申し上げます。微力ながら、これからも皆さんの作句のお役に立てれば幸いです。どうぞよいお年をお迎えください。
〇朝日射す渚近くに鴨の群れ 作好
【評】風景画のように堅実な写生句です。「近くに」がやや曖昧で、一句の印象を弱めている気もしますので、削ってもいいかもしれませんね。
△置いた傘持ち去られお(を)り冬の雨 作好
【評】「持ち去られ」たのであれば、「置いた」は省略できるように思います。また、「置いた」と書くと、どこに置いたのかも気になります。とりあえず「大好きな傘持ち去られ冬の雨」としておきます。
△~〇雪催い(ひ)一羽居残る川の端 美春
【評】「一羽」だけですと、どんな鳥なのか読者は思い浮かべることができません。たとえば「鷺一羽居残る川や雪催ひ」など、もうすこし推敲してみてください。
〇雪催い(ひ)さやぎ治むる小川かな 美春
【評】静かな景です。「かな」がやや強い気がしますので、「雪催ひ小川のさやぎ治まれり」とするのも一法でしょうか。
〇菱の実や乾きを待ちて飛ばむとす 白き花
【評】しっかりと観察した句ですが、少々散文的な印象を受けます。もうすこしシェープアップし、「乾きたる菱の実まさに飛ばむとす」くらいでいかがでしょう。
△森深し威風堂々と枯れ朴葉 白き花
【評】中七の字余り(中八)がいけません。とりあえず「森深しどれも立派な枯れ朴葉」としておきます。
〇吾に寄る巡視ロボット降誕祭 徒歩
【評】名古屋の「JRセントラルタワーズ」15階のロビーを巡視しているロボットですね。まさに近未来的風景。「吾に」は省略できるように思います。字数が限られるので難しいところですが「まはり来る巡視ロボット降誕祭」などもう一工夫してみてください。
△~〇加湿器やトレイに痩せし臼歯と血 徒歩
【評】歯科医院で臼歯を抜いたのですね。このままですと今一つ季語が効いていない気がします。「加湿器のかすかな音や臼歯抜く」など、もうすこし推敲できそうです。
△~〇揺らめきつ明かり増へ(え)ゆく冬の海 万亀子
【評】揺らめきながら増える明かりとは何なのか、よくわかりませんでした。漁船の灯でしょうか。そのへんを明示するとさらによくなりそうです。とりあえず切れを入れ、「揺らめきつ増ゆる火影や冬の海」としておきます。
〇冬暁闇より富士の浮かびけり 万亀子
【評】「暁」があるので「闇」は言わなくてもいいでしょう。「冬暁ほんのり富岳浮き出づる」など。
△~〇沈む日の深紅を纏ひ山眠る 恵子
【評】「沈む」「纏ひ」「眠る」と動詞が3つもあるのが気になります。動詞は最大限2つとしましょう。「落日の深紅に染まり山眠る」など。
〇四温晴小枝でリース作る子等 恵子
【評】情景が見えてきます。素直な作りでけっこうです。今の時期ですと「小枝もてリース作る子十二月」とする方法もあります。
△~〇陽の黄色まとひ凛たる石蕗の花 永河
【評】作者が「凛たる」まで言ってしまうと、読者は鑑賞の余地がなくなってしまいます。「陽の黄色」というのもどうでしょう。とりあえず「つはぶきの花金色の陽をまとふ」としてみました。
△靴光る護岸工事の冬の人 永河
【評】「冬の人」という言い方はあまりこなれていませんね。また、「靴」と「人」はワンセットですので離してはいけません。別の句になってしまいますが「冬日影蹴ちらす護岸工事かな」と考えてみました。
△~〇出番終へピエロの消ゆる冬木立 妙好
【評】どこに消えたのか気になるところです。とりあえず「出番終へピエロ素顔に冬木立」としておきます。
◎褒章を辞退せし人冬紅葉 妙好
【評】「谷川俊太郎さん」と前書があります。多方面に功績を残された方ですが、妙好さんにとっては「褒章を辞退」したことが最も印象に残っているのですね。
△~〇齧り痕ある岩石のごとき藷 冬芽
【評】この語順ですと初読のとき、岩石に齧り痕があるのかと思ってしまいます。「ごつごつの藷に細かな齧り痕」くらいでどうでしょう。
〇手にのせて冬の目高の跳ねもせず 冬芽
【評】「冬の目高」でいいのかどうか迷うところ。「寒き手に乗せたる目高跳ねもせず」とどちらがいいでしょう。
△人肌の温もり残す布団かな 智代
【評】さきほどまで寝ていた布団から出たということですね。ごくありふれた日常風景で、驚きがありません。もっと詩的飛躍がほしいところ。
〇昼食の〆はとろとろ蕎麦湯乾す 智代
【評】今一つ報告どまりという感じですが、「とろとろ」に面白みがあるのかも。「〆は」よりも「〆に」のほうが自然でしょうか。
△~〇アドベントカレンダー子へ十二月 翠
【評】季語ではありませんが、「アドベントカレンダー」といえば12月に決まっていますので、季語に工夫がほしいところです。「アドベントカレンダー子へ蜜柑添へ」など工夫してみてください。
△~〇ポインセチア蝶ネクタイで弾くピアノ 翠
【評】「ポインセチア」も「蝶ネクタイ」も「ピアノ」も物ですが、物が3つもあるとしつこい句になります。季語は物以外にするとよいでしょう。たとえば「歳晩や蝶ネクタイで弾くピアノ」など。
△冬の鴨横に並びて川渡る チヅ
【評】鴨は冬の季語ですので、「冬の鴨」とは言いません。「鴨十羽横に並びて川渡る」など工夫してみてください。
〇息白く児ら競ひ合ふ早歩き チヅ
【評】登校時の風景でしょうか。素直な詠みでけっこうです。
〇冬枯れの紫陽花に来し群れ雀 久美
【評】しっかりとした写生句でけっこうです。「冬枯の紫陽花に来し群雀」と送り仮名を省くと句が引き締まります。
〇冬日和立ち向い(ひ)たる手術の日 久美
【評】強い気持ちが伝わってきます。「日和」の「日」と「手術の日」の「日」の重複が気になります。「冬晴や立ち向ひたる手術の日」などとするといいかもしれません。
次回は来年1月7日(火)の掲載となります。6日(月)の午後6時までにご投句いただけると幸いです。皆様、よいお年を!河原地英武
「カナリア俳壇」への投句をお待ちしています。
アドレスは efude1005@yahoo.co.jp 投句の仕方についてはこちらをご参照ください。