「カナリア俳壇」105

残暑お見舞い申し上げます。皆様お変わりなくお過ごしのことと思います。
暑い暑いと過ごしてきましたが、今ちょっと窓の外を見ると、午後7時過ぎなのですが、もうだいぶ暗くなっていてびっくり。この間まであんなに明るかったのに。着実に秋は来ているのですね。

○虹色のネイル孫見せ夏祭り     ゆき
【評】現代風の祭の風景ですね。動詞をカットし「虹色のネイルの孫や夏祭」とすれば、さらに引き締まります。

△溪遊ぶ子らの叫びと擬宝珠かな     ゆき
【評】言葉の詰め込みすぎで、句にゆとりがありません。「擬宝珠や渓より子らの遊ぶ声」くらいでどうでしょう。

△~○山百合を丈夫な棒は支えけり     作好
【評】「山百合を丈夫な棒で支へけり」と素直に詠んだほうがよいと思います。

△炎天下氷の旗ぞ救急所     作好
【評】三段切れです。とりあえず「炎天や氷置きたる救急所」としておきます。

△~○熱帯夜雨のしづくも重たげに     美春
【評】季語の本意の問題にもなってくるのですが、「熱帯夜」という場合、一般に雨天は想定しません。別の句になりますが「熱帯夜蛇口のしづく重たげに」としてみました。

○盆東風やうす塩味の和菓子買ひ     美春
【評】すなおな写生句です。欲をいえば「和菓子」がもう少し具体的になるといいですね。「盆東風やうす塩味のひねり揚げ」「盆東風やうす塩味の伊勢銘菓」など。

◎浴衣着て郡上の人と下駄鳴らす     瞳
【評】郡上おどりの風景であることはすぐわかります。「郡上の人と」がいいですね。

○ひぐらしや元藩校の宿泊る     瞳
【評】「宿泊る」が舌足らずで惜しい。「ひぐらしや元藩校といふ旅館」あるいは「つくつくし元藩校の宿に入る」など、もう一工夫して下さい。

◎赤茶けし遺稿の半紙敗戦日     徒歩
【評】季語の力でこの遺稿がずしりと重いものに感じられます。「赤茶けし」という描写も効果的です。

◎書肆の灯に足を止めたり終戦日     徒歩
【評】なぜ足を止めたのか、と聞くのは野暮というもの。私小説風のドラマ性と詩情が感じられます。

○銀やんま水面のきらと揺れあへり     妙好
【評】たしかな観察眼による即物具象句ですが、最後の「揺れあへり」が今一つわかりませんでした。「水面のきらに触れゆけり」くらいでどうでしょう。

△~○鮎を釣る職退きし兄おとと     妙好
【評】少し調べが悪いように思います。「職退きし兄と弟鮎釣れり」と考えてみました。

○~◎Tシャツを絞ったなりで着る炎暑     白き花
【評】炎暑のしんどさがよく捉えられています。「絞つた」と「つ」を大きくしましょう。

○~◎涼しかる葉叢(はむら)踏みたる素足裏     白き花
【評】感覚的な句でけっこうです。上五は「涼しかり」としましょう。

◎地蔵会や力士ふるまふちやんこ鍋     万亀子
【評】地蔵会は子供のためのお盆。ちゃんこ鍋を振る舞われているのも、きっと子供たちなのでしょうね。

○浮いて来い釣り上げし子の得意顔     万亀子
【評】「得意顔」をもう少し客観描写したいところです。「浮いて来い釣り上げし子のVサイン」「浮いて来い釣り上げし子へ拍手かな」等。また「○○祭」や「夜店」など前書があると分かりやすいかもしれません。

◎風鈴のちりとも鳴らず暮れゆけり     恵子
【評】どこか虚無的な印象を与える晩夏の風景が見えてきました。

○ISS夏の夜空をすべりゆく     恵子
【評】ISSはアイエスエスと読むのですね。国際宇宙ステーションの略語。「すべりゆく」が涼しげでいい感じです。

○ボール追うバスケの児らのひたい汗     千代
【評】部活風景でしょうか。しっかりとした写生句です。「児」だと園児などを連想してしまうので、「子ら」のほうがよいでしょう。「追う」は「追ふ」、「ひたい」は「ひたひ」と表記しましょう。

○軒下の児らの水浴び足漬けし     千代
【評】どこか懐かしくて楽しい光景です。中七で切れますので、下五は流す感じで「足漬けて」としましょう。

○高原の小さき食堂ラムネ飲む     きん子
【評】句形は申し分なく、直す箇所も見当たりません。しかし、どこかにぐっと力瘤を入れるポイントがないと、淡い印象しか残りません。俳句の難しいところですね。

○仔馬見に土やはらかき登り坂    きん子
【評】土の軟らかさだけでは、この「登り坂」があまり印象に残りません。「仔馬見に」とせず、実際に仔馬を見てから作ったほうがより精彩のある句になるような気がします。

○抜きん出る白鷺の首青田風     永河
【評】写生も着実で、骨格のたしかな句だと思います。しかし、白鷺と青田の取り合わせには既視感があって、今一つオリジナリティーの点で弱い気がしました。

△朝顔に宙あえかなる蔓の先     永河
【評】「あえか」とは雅語で「弱々しく、美しいさま」。朝顔の蔓が頼りなげに宙に震えている様子を捉えた句と思います。「朝顔に」と「蔓の先」はワンセットですので切り離さず、「宙あえかなり朝顔の蔓の先」ではないでしょうか。

△透かし見る金魚あぶく金玉羮     智代
【評】「金魚」と「金玉羮」がともに夏の季語ですが、「金魚あぶく」という言い方があるのでしょうか。うまく句意がとれませんでした。5・6・6という破調も気になりました。「透かし見る」は自分自身の動作ですね。これは省略し、透かし見た結果だけを客観的に描写するのがいいと思います。

△~○土用鰻粋な女将の割烹着     智代
【評】とりあえずは出来ている句ですが、「粋な」というのは作者の解釈。なぜ粋に感じたのか、どこが粋に見えたのか、そこを客観描写するのが真の俳句です。

次回は9月3日(火)の掲載となります。前日2日の午後6時までにご投句頂けると幸いです。天候不順の折から皆さんご自愛の上、お過ごしください。河原地英武

「カナリア俳壇」への投句をお待ちしています。
アドレスは efude1005@yahoo.co.jp 投句の仕方についてはこちらをご参照ください。


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