先日、視覚障害者の団体のみなさんの集いの場に呼んでいただき、防災について一緒に考えました。以前から何度か参加させていただいている場で、今回は約半年ぶりでした。この半年の間で、1月1日の能登半島の地震があり、台湾でも地震があり、最近では大雨がふり、そろそろ台風や長雨のシーズンとなりました。心配は尽きません。
集いの場では、最初に、参加されていた皆さんと一緒に、家に備蓄しておきたい物のチェックリストを確認しました。一つひとつ、家に有るか無いか、足りるかどうかを思い出していただきました。その後、行っている備えや心配ごと、疑問やこれまでの経験などについて、自由に意見を交換しました。
やはり心配ごととして挙がるのは、「どんな災害がおこり、どんなことになるか」によって、取るべき対応が異なるのではないか?ということです。つまり、地震のときと、台風や大雨のときでは状況は大きくことなるであろうから、どうすればいいのか?ということです。地震の場合は、突然起こり、その最中には家の中では物が落ちたり崩れたりして、ふだん知っている家の中の配置とは異なってしまう可能性があります。同時に、家の外も建物が崩れるなどで普段には慣れている状況は一変してしまうかもしれません。一方、台風や大雨などでは、早いと数日前から予報が出され、準備をする時間があり、その間、早い段階では家の中も周囲の状況も、普段と大きく変わらないでしょう。ただし、洪水、浸水が始まると道路には水がたまり、その深さが深くなってくると歩きにくく環境は大きく変わってしまうので、行動をするタイミングはとても大事です。
また、以前から引き続き挙がった意見は、避難所に行くことの不安についてでした。避難所までの道中は一緒に行ってくれる人がいても、「避難所に着きました」と言われて体育館等に入った後にぽつんと残されてしまうと困るであろうと言う心配事です。特に視覚障害者の場合は、杖を持ち歩いていると周囲の人が気づいてくれるが、大勢の中で座り込んでいる周囲からは見えていないことがわかりにくく、どうしても取り残されてしまうのです。この心配事に対して他の参加者からは、『ヘルプマークをつけておく』という意見がでました。ヘルプマークをご存じでない方もいらっしゃったので、持っている人がどこでもらえるかを説明されました。『地域の避難訓練に参加せなあかんよ』という意見もでました。「避難訓練がいつ行われているかわからない」、回覧板は読めないから回す順番を飛ばしてもらっている」という話が出ました。それに対して『持ってきてくれた人に読んでもらったらええねん』という意見が出ました。「迷惑をかけたくない」という反応がありましたが、また他の参加者は『私は周囲の人に色々きいて普段から助けてもらう。服の色をたずね、ちょっと見てと言ってお願いする。そうやっていると、どういうことに困るかを分かってもらえる』という話をされました。そして、周囲の人に対して具体的にしてほしいことをお願いすることで、周囲も何をどうしたらいいのかが分かり、お手伝いがしやすくなるのではないか、という話をしました。
大勢で話をすると、他の人が行っている工夫や、日ごろから取り組んでいることを伺うことができ、「あ、なるほど。そうすればいいのか」と気づくことがあります。自分一人で思いつくことには限りがありますし、思いついたとしてもためらってしまうこともあるでしょう。でも、『私は、こうしている』という意見が聞けると、他の人がしているのだからやってみようかな、と思いやすくなりますね。
私は地域での福祉の支援をする機会がときどきありますが、自分自身が生活の中で見て行動したり判断することが出来ていると、見えないという状況はいくらかは想像できても完璧に想像できるわけではありません。また、どんなときに、どんなことをして欲しいかは、人それぞれ異なるでしょう。それは、視覚障害がある人だけでなく、さまざまな人にあてはまることだと思うので、いろんな人の声を聴くことは支援者が独りよがりの支援をしないためにも必要なことだと思いました。
さて、そろそろ日本中が梅雨入りし、大雨長雨と、台風も発生する季節に入りました。家の中の備えを再確認し、水害に関するハザードマップで家や良く行く場所の浸水などを調べ、避難先と避難経路を確認し、自分でできる備えを進めていきましょう。また、隣近所同士では挨拶をしあい、顔がわかり、少し話ができる間柄の人を増やせると良いでしょう。
防災の取り組みでは、モノをそろえるだけでなく、ヒトの繋がりを日ごろから保つことも大切です。防災は日々の積み重ね!と思って、できることにコツコツと取り組めるといいですね。