友人と思い出話に花が咲く中「鬼」が、私たちのテーブルにやって来た。「お前ら、ほんまにすまんかった。」開口一番そんな言葉が鬼の口から出た。まるで話していた事を聞いていたかの様に。当時と変わらず１００ｋｇ超の身体は、少し丸みを帯びていた。高校生が自主的な練習がしたいと言ったところで先生の指導なしに強くなれるはずもなかったが、皆の心の持ちようが、変わった。先生も変わった。相変わらず稽古は苦しいが自分達が主体に成れた。冬には、全国大会に出場した。夏には、念願のインターハイにも出場出来た。私達17歳。先生は、27歳。多感な時代に出会った「鬼」は、私達を導く「菩薩」だったのかもしれない。「妥協するな！」稽古中よく怒鳴られたが、卒業後しんどい時、何時もその言葉に励まされた。「やれるだろ！お前らなら！」言わなかったがそんな言葉が、きっと後に隠れていたのだと思う。

京滋有機農業研究会 会長の田中真弥さんが無減農薬野菜などの宅配サービスの会員向けに連載しているコラム「こころ野便り」を当サイトにも掲載させて頂いています。前回はこちら。