もうすこし紅葉を楽しみたいのにもう師走。何かせかされるように毎日が過ぎてゆくこのごろです。
△~〇いい日なりジャグジーの湯と大紅葉 ゆき
【評】「いい日なり」といわず、客観的に何かを描写できるとさらに俳句らしくなります(俳句では主観を述べません)。たとえば「浮雲やジャグジーの湯と大紅葉」など。
〇露天風呂背のもみじ葉を取りませうか ゆき
【評】和やかな雰囲気が伝わってきます。下五が字余りですので「取りましよか」でどうでしょう。「取りましょか」と読みます。「もみぢ」と表記してください。
△~〇天高し長蛇の列のレストラン 作好
【評】評判のレストランなのでしょう。どんなレストランなのか、都会なのか田舎なのかなどがわかりませんので、もっと具体的に述べてください。たとえば街なかの雰囲気を出し「黄落や洋食店に長き列」などとするのも一法でしょうか。
△~〇間引菜を酒の肴にコップ酒 作好
【評】「酒」という字が二度も出てくるのが難点です。「間引菜を肴に一人コップ酒」など。
△~〇虎落笛夫婦けんかの矛収め 瞳
【評】この季語から作者のどんな気持ちを汲み取ればいいのでしょう。強風ですので、けんかの激しさを示唆したいのでしょうか。「虎落風夫はそつぽを向くばかり」だと喧嘩の最中となって季語がより生きるように思います。
△朝焼けを拝む婆の背冬ぬくし 瞳
【評】「冬ぬくし」という季語は早朝でなく、昼間のイメージです。また「朝焼(け)」は夏の季語です。「着膨れて婆の拝める日の出かな」などご一考ください。
△~〇湯の帰り母娘急ぐや冬の月 美春
【評】「急ぐ」では、せっかく月を出した甲斐がありません。たとえば「湯屋を出て母子仰げり冬の月」とすればより情緒的な句になりそうです。
△~〇夕影に今を盛りと帰り花 美春
【評】「盛り」とは、春などその花が本来咲く時期にこそふさわしい語です。帰り花の場合は盛りらしい盛りもなく、あわあわと咲くはかなげな風情にこそ本情があります。一例として「夕影にいろを濃くせり帰り花」としてみました。
△~〇寒雷や見知らぬ家の窓に顔 徒歩
【評】「見知らぬ人の家」ですね(「見知らぬ家」は省略のし過ぎでは?)。作者が戸外にいるのか、それとも室内にいるのかも曖昧です。「寒雷や見知らぬ人が玄関に」ではサスペンスになってしまいそうですね、、、。
〇ときは今ベースはソロに暖炉燃ゆ 徒歩
【評】往年のロックバンドの最後の一人でしょうか。雰囲気は伝わりますが、三段切れでは?別の句になってしまいますが「独り弾く老ベーシスト暖炉燃え」と考えてみました。
〇雲流る真綿引く母ゐますかに 妙好
【評】このままですとお母さんが空にいるかのように読めてしまいますので、上五で切りましょう。とりあえず「雲ゆくや真綿引きたる母遠し」としてみました。
◎山眠る大言海は書架に古り 妙好
【評】どっしりとした季語と、古びた重厚な大言海がよくマッチしていますね。
△~〇団栗のあまた転がる野の小径 チヅ
【評】「野」ですと、木のない草原が思い浮かびますので、なぜ団栗があるのかわからなくなってしまいます。「きりもなく団栗落つる小径かな」などもう一工夫してみてください。
〇壺で焼く焼き芋の香に腹の虫 チヅ
【評】「焼く」とありますので、「焼き芋」の「焼き」は要りません。「壺で焼く芋の香りに腹の虫」でどうでしょう。
〇~◎あへぎつつ巡る三尾の紅葉狩 万亀子
【評】京都の三尾(さんび)は紅葉の絶景エリア。俳句では切れが必須といっていいほど大切ですので、切れを入れ、「あへぎつつ巡る三尾や紅葉狩」でどうでしょう。
△川床料理明日から休み紅葉散る 万亀子
【評】「川床料理」は夏の季語、「紅葉散る」は冬の季語です。「山深き京の珍味や散紅葉」など季重なりにならないよう工夫してみてください。
〇霜降りし畑の白菜甘み増し 千代
【評】すなおに詠んだ句で結構です。動詞で終わるときは連用形でなく、終止形にしましょう。「霜降りし畑の白菜甘み増す」。
△~〇枝に霜黄色の柚子や香り放つ 千代
【評】三段切れですね。上五で切れていますので、中七は切らず、「枝に霜黄色の柚子の匂ひ立つ」などとしてください。
〇日に透けて焔立つかに冬紅葉 智代
【評】おおむねけっこうです。中七がやや間延びしていますので、「日に透けて焔の如し冬紅葉」でどうでしょう。より力強い句になるように思います。
〇銀杏散る屋根も地べたも黄一色(ひといろ) 智代
【評】これも大体けっこうです。散る銀杏の葉が黄色であることは自明ですので、「銀杏散る屋根も地べたも一色に」くらいでいかがでしょう。
△~〇障子閉め外光緩く影絵差す 白き花
【評】「影が差す」とは言いますが、「影絵差す」とは言いません。それと全体が散文的で説明調です。「閉ざしたる障子に鳥の影弾む」など、何の影か示せるといいですね。
〇青い葉のわっとはみ出(で)し蕪えらぶ 白き花
【評】勢いがあって元気の出る句です。「はみ出し」ですと、どこからはみ出したのか読者は気になりますので、「青い葉のわつと出でたる蕪えらぶ」としてみました。「っ」は大きく表記します。
◎冬耕の土塊朝日吸うてをり 永河
【評】生命力の横溢した句です。日の恵みを吸ってさらに肥沃な土になりそうです。
◎日向ぼこアロエの鉢を側に置き 永河
【評】アロエが効果的です。アロエといっしょに日向ぼことはお洒落ですね。
◎波のなき湾に小舟や冬夕焼 織美
【評】波のない平らで静かな湾の風景はいかにも冬を思わせます。季語とぴったりです。
△~〇児等遊ぶ路地はクランク冬日和 織美
【評】クランクという外来語がこの句の中でどれほど効果的か、悩みます。とりあえず「路地裏に児等遊ぶこゑ冬日和」としておきます。
〇冬の月火の上駆ける裸足かな りん子
【評】「火渡神事」と前書があります。前書なしでも通じるように「火を渡る裸足のをのこ冬の月」としてみました。最初に「冬の月」を置くと、視線が上に行ってしまいますので(この句は裸足がポイントですね)、下五に季語を移しました。
〇新米の匂ひや木曽の五平餅 りん子
【評】五平餅自体は秋とは限りませんが、新米の時期には味も香りも格別なのでしょうね。
次回は12月26日(火)の掲載となります。前日25日の午後6時までにご投句いただけると幸いです。河原地英武
「カナリア俳壇」への投句をお待ちしています。
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