ある成年後見人の独り言

成年後見人として仕事をしていると、当然、新しい出会いもありますし、また当然、お別れの時も訪れます。家族でもなく、契約をしているサービス事業所でもなく、法律で定められた制度によって取り持たれた縁から、いろいろな出来事を共有する専門職成年後見人。ご本人に代われるメリットもあれば、ご本人の自由を制限することにもなる、賛否ある制度です。そんな制度の中で、成年後見人として働く私が、ふと思うことを書きたいと思います。

最近は雨が多く鬱々としている日も多いので、ちょっとセンチメンタルなのかもしれません。よかったら、お付き合いください。

社会福祉士という資格を持って仕事をしている為、福祉の支援や理解がより必要な方の成年後見人になることが多いように思います。身寄りがない方も多く、若いころからそうである人、最近そうなった人、いろいろです。成年後見人としてできる支援は、実際は限られていて、接する時間から考えると、一番身近な支援者にはなりにくい立場です。もちろん、大切な財産を管理したり、身上保護というその人が安心安全に必要なサポートや環境の中で暮らせているかを考える立場としては、とても大切なところを支援するので、存在と影響としては、大きいものだと思います。とはいえ、やはり、入所施設では施設の職員さんのほうが馴染みになるでしょうし、在宅にいらっしゃると食事や掃除など日常のことをしてくださるヘルパーさんや訪問看護さんとの親しみが大きくなるのは、自然です。でも、一つ、成年後見人がほかの介護保険や障害福祉サービスの支援者らと違うことを挙げるとすれば、「基本的には、末永くご一緒する」という点でしょう。特に、個人の成年後見人の場合、基本的には長い期間、人生にかかわることになります。高齢の方の場合、残りの人生を最期まで、ということも多いです。「在宅生活の間も、もし、これから先、入院や入所になっても、私は一緒にいます。」ということになります。

とある高齢男性の方の成年後見人になったとき、「これからの人生、私もともに歩みます」と挨拶をしたところ、生涯独身だったその男性は、にっこり笑って「嫁さんが来たみたい」とおっしゃり、ご本人も、周りにいた支援者も、大笑いをしたことがありました。仕事ではあるのですが、それでも、状態を気にかけ、入院したと聞けば飛んでいき説明を聞き、家計を管理して、ときどき口うるさく健康に気遣うように言ったりする点は、そんな風に思える部分もあるなぁ、と思います。

また別の高齢女性は、私が訪問するたびに、健康になる食べ物の作り方や、元気でいる秘訣を教えてくださいました。昔の話を聞いたり、お好きだった草花の話を聞いたり。少し年の離れた女友達が来たような感じだったのか、たくさんおしゃべりをしました。ときどき電話がかかってきて、「次に来るときに、大きなミカンをかってきてちょうだい」とおっしゃることがあり、いくつかの種類の柑橘を届けると、そこからまた、果物の話や、美味しい食べ物の話が始まりました。食べることと、しゃべることは、生きる力の源だと今でも思います。

そのほかにも、それぞれの方にいろんな思い出があります。おそらく、窮屈に思わせてしまったこともあるでしょうし、きちんと意図を汲みとれなかったこともあると思います。成年後見制度を利用されている方は、それぞれ、いくらかは判断や理解をすることが難しくなって来られているので、にっこりしていらっしゃった一方、もし、もっと自由に表現できたら、もっと別の思いをおっしゃられたかもしれません。いくらやっても、人のことは想像も理解もしきれず、果てしないものだなと思います。

いろんな方がいらっしゃって、家族とともにお別れの場に立ち会ったことも、家族がいらっしゃらずお別れを伝えられなかったこともあります。どの人も、時々ふと思い出すことがありますし、いろんな生き方があると教わったようにも思います。歴史に名を遺す人はごくわずかです。ほとんどの人が、100年、200年のうちには、存在していたことも知られなくなるのだと思います。とはいえ、そうだとしても、私が生きている間は時々思い出し、おそらく、いくらかは私の行動に影響を与えられていて、私が接する人につながっているのだろうと思います。

誰もが大切な一人ひとりで、つながりあって今に至り、また未来へつながっていくのだろうな・・・なんか、すごいな・・・と思う今日この頃。

今年、ブルーベリーの鉢植えを2つ買いました。買った時点で実がたくさんなっていて、あとは熟れるのを待つだけの鉢植えブルーベリー。それが、最近はぽつぽつと熟れてきて、いくつかちぎって食べてみたのですが、10個ぐらい採ったなかで、甘かったのが1個。あとは、おそろしい酸っぱさです。大抵、朝起きてすぐにブルーベリーを観察し、熟れてそうなものをちぎるのですが、1勝9敗です。おかげで、朝は酸っぱさですっきり目覚めています。しかし、さすがに、私もそこまで負けると、そこから学びまして、しばらくの間はちぎらずに我慢をしているのですが・・・一体、ブルーベリーの収穫時期って、どうやって見極めるのでしょうか。まだわからないので、たぶん、このままだと置きすぎになるような気がします。見守るのと、介入するののタイミングって、むずかしい・・・

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兵庫県在住。「福祉×ICTで、毎日を安心安全に、心豊かに。あなたに寄り添う相談援助」をモットーに『森のすず社会福祉士事務所』開業。成年後見等による高齢者・障害者支援、認知症の方と家族の支援ならびに防災と福祉の地域啓発活動、スクールソーシャルワーカー、各種研修講師などの活動に取り組んでいる。2022年から同志社大学社会学研究科の後期課程博士課程院生。カレーと豆好き。犬大好き。社会福祉士、公認心理師、防災士。介護支援専門員。第1種大型自動車免許、2級FP技能士、第2級アマチュア無線技士。