こころ野便り~旅

種まきを息子に任せ妻と10数年振りに旅に出た。石狩川の河口を初めて訪れた。日本海と石狩川を隔てる長く伸びた砂州は今も成長し続けている。赤と白の太い縞模様にペイントされた灯台は、100年前に建てられた初代の物と同じ場所に有る。その後砂州は、幅500m長さ1.5kmに渡り、成長し現在の河口は、灯台の遥か先に有る。コンクリートで固められることなく新しく伸びた砂州には、草原が広がっていた。翌日は、北へ移動し天塩川の河口を訪れた。天塩川も北海道の大河で河口の手前では、日本海と川を隔てる長い砂州が発達している。その北側には、国立公園に指定された湿原と原野が広がる。公園内のビジターセンターにアイヌの伝承が記されていた。地元の沼に降臨したカムイに付いてきた河童の話。若い女性をおびき出し悪事を働こうとする河童は、カムイに見つかり頭の皿を割られ妖力を失ってしまう。その後河童は、どうなったか分からないが、女性をおびき寄せる時河童は、甲高い草笛の音を響かせたと言う。「甲高い草笛の音」という記述に目が留まった。何故なら、35年前その近くでそんな音を聞いたからだ。それは、牡鹿の鳴き声とは、確かに違う。色濃く自然の残された場所に身を置いた時、何か忘れていた感覚が蘇るのだろうか。単に自然に対する畏敬の念と言うより郷愁を伴う安らぎと少し怖い様な不思議な感覚だ。無くしてはならない物の一つだと思う。

京滋有機農業研究会 会長の田中真弥さんが無減農薬野菜などの宅配サービスの会員向けに連載しているコラム「こころ野便り」を当サイトにも掲載させて頂いています。前回はこちら


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